台湾における植物工場の市場概要と現状分析

太陽光型の研究開発も加速。フルーツトマト市場も徐々に拡大

 ここ2~3年間における施設稼働数でいうと日本と同様の成長率をみせている台湾だが、その施設規模は非常に小さい。参入の多くはLED照明、FA関連企業(Factory Automation)など製造業が中心であり、将来的には設備プラントの販売を想定し、自社の技術アピールや運営ノウハウ蓄積を目的としたショールーム的な施設が大半を占めているからである。

ただし、大規模な生産施設を稼働させているベンチャー企業も現れており、詳細は調査レポートの企業事例にて紹介している。また大手グローバル・メーカーでも設備販売ではなく、野菜の生産・販売事業にて世界展開を計画しているケースもある。

台湾における植物工場の市場概要と現状分析【展示会でも白色やRGB(赤・緑・青)を組み合わせたLED光源メーカーが多く出展している】


 今回は完全人工光型植物工場をメインテーマとして調査を実施したが、台湾では施設園芸や太陽光利用型植物工場の研究開発も進められている。

例えば有名な作物として「胡蝶蘭などの花卉類」がある。胡蝶蘭の生産では、太陽光利用型植物工場(補光として植物育成用LEDも導入)が一般的であり、台大蘭園など数十haの施設面積を持つ大規模生産者による寡占状態となっている。

生産された花卉類の多くは輸出向けであり、日本にて販売されている胡蝶蘭は台湾産が多く、完成された販売商品を日本へ輸出するだけでなく、台湾にて苗まで生育させたものを、日本の生産者が輸入し、日本国内にて成長・開花調整を行うケースもある。
 ※ 写真:台大蘭園の施設内部の様子

台湾における植物工場の市場概要と現状分析
 台大蘭園では約14haの施設を運営しており、新たな育種の研究、花卉類の生産・卸・小売の全てを行っている。日本をはじめ、米国や欧州、最近ではシンガポールや東南アジアからの注文が多いという。例えば、同社の胡蝶蘭商品は台湾国内にて3,000台湾ドル(約12,000円)にて販売されている。

その他、市場規模としては限定的だが、フルーツトマト市場も存在しており、小売店舗でも目にする機会が増えている。こうしたトマトは、気候条件に恵まれている南部エリアの生産者たちが生産組合をつくり、主に太陽光利用型植物工場(培地はロックウールではなく、土耕やピートモスを利用することが多い)にてフルーツトマトの生産を行っている。

冬に多く生産・流通する一般的なトマトは生食用とはいえ、酸味が強く果皮も固い特徴があり、品質より量を重視した形となっている。トマトは中国や台湾では大量に消費される野菜の一つである。台湾における価格は日本と同等レベルであり、一般的な生食用トマトが300円/kg前後に対して、新たな商品カテゴリーとして提供がスタートしているフルーツトマトは1,000円/kg前後の取引価格となっている。

台湾における植物工場の市場概要と現状分析【台湾の卸売市場の様子】青果の卸売市場では様々な種類のトマトやパプリカが並んでいる。現地の消費者も購入することができる。


一般消費者が購入する台湾の小売スーパーでは現在、日本のように様々な種類のトマト商品が販売されているわけではないが、将来的にはフルーツトマトも多く流通する可能性は多いにある。

例えば韓国が太陽光利用型植物工場にて生産するパプリカは当初、日本への輸出用が全量を占めていたほどだったが、現在では国内需要が半分近くまで伸びている。スーパーでは大きなパプリカが1個100円前後で販売されており、野菜炒めなどの家庭料理の食材の一つとしてパプリカが頻繁に利用されている。

台湾の南部に集中する施設園芸や植物工場だが、生産者あたりの平均面積は小さくフルーツトマトのようなニッチ市場の商品は1,000~3,000平方メートル(10a~30aアール)の小さなプラスチック温室ハウスにて生産されている。

日本と同様に高温多湿の気候条件を持つ台湾ではオランダとは異なる温室設計や栽培ノウハウが必要となり、今後の研究動向にも注目していきたい。

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