シンガポールの公共公園の一つである「Choa Chu Kang Park」にて、周辺住民向けの園芸治療ガーデンが新たに開設された。7月7日に開設した園芸治療ガーデンの面積は約900m2。
公園内には、その他にも、子供が遊ぶ広場や運動場。そして地元住民へのレンタルファーム(貸農園)も整備されている。
日本以上に高齢化が進むシンガポール
シンガポールは、2000年に高齢化社会(65歳以上が総人口に占める割合:7%)となり、2016年には高齢社会(14%)に突入した。
日本よりも短い期間・急速に高齢化が進んでいるシンガポールでは、高齢者への福祉ケアも重要政策の一つとして設定され、植物を利用した園芸治療にも力を入れている。
五感を刺激する固有植物を選択
新規開設した園芸治療ガーデンでは、昔からシンガポール現地にて利用されているような植物を選択。訪問者、特に痴呆の症状がある高齢者などの精神的な安定につながる植物を栽培している。
香りの強い植物や色の濃い花、食べたときに特徴のある風味・食感といったような五感を刺激することで、脳内の記憶を喚起させる効果がある、という。
園芸治療ガーデンでは、パンダンや赤い花を咲かせるハイビスカスが植えられている。パンダンは、マレーシアやシンガポールの家庭でも一般的に栽培されている植物であり、香りが強く、パンダンの葉を食事に入れることもあるくらい馴染みのある植物である。
シンガポール政府は、園芸治療に対する科学的な効果・検証も行っており、人によって症状や原因も異なるため、明確な効果を打ち出すことは難しいが、それでも、多くの高齢者に対して一定の症状改善がみられる、という。
その他、園芸治療ガーデンでは、車イスでも通れるようにバリアフリー化が行われている。例えば、草取りや苗の定植、収穫といった作業を車イスのままで行えるように整備されており、高齢者への運動・リハビリ効果にもつながる。
政府が指定する農業パーク内には、同様の地域住民向けの園芸治療ガーデンが他にも3カ所あり、今回の「Choa Chu Kang Park」内で4カ所目となる。
シンガポール政府によると、2019年の初めには、さらに2カ所のガーデンを開設予定としており、国内には園芸治療ガーデンが合計6カ所になる、という。
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