先進国による土地獲得競争ランドラッシュ、5,000haの農地の取引金額1,000億ドル以上

 2008年の穀物価格高騰をキッカケに、中東や中国・韓国といった国々が途上国の農地獲得に向けて、積極的に動き始めている。現時点(2010年)では、途上国における約4,000~5,000haの農地が売買され、1,000億ドルもの金額が取引されている、と推計されている。

こうした現状を、世界銀行では「Global Land Rush (世界的な土地獲得競争)」と題して、警鐘を鳴らしている。

先進国による土地獲得競争ランドラッシュ、5,000haの農地の取引金額1,000億ドル以上
世界銀行による「Global Land Rush (世界的な土地獲得競争)」に関するレポートの要約は以下のような内容である。

  • 途上国では土地の売買に関する法律が整備されておらず、非常に弱い立場となっている
  • 対等・公平な取引は実現されず、法外に安い価格で農地が取引されている
  • 契約では、農地に投資を行うことで、現地雇用やインフラ整備が約束されてはいるものの、実際にはこうした約束を守る投資家は少ない
  • 場合によっては、現地の資源に多大な損害を与えるケースもある



また、シドニー大学のサステナブル農業の専門家でもあるJohn Crawford氏は、以下のような研究データを発表している。

  • 年間に750億トンもの土壌が失われており、世界の農地の80%以上が何らかの影響を受けている
  • 特に中国では、自然環境の中で起こるスピードの57倍もの速さで土壌が消失している
  • 欧州では17倍、米国では10倍、オーストラリアでは5倍のスピードで土壌が失われている
  • 土壌中には貴重な炭素が含まれているが、耕作することで温室効果ガスの放出にもつながり、世界の土壌農地は、抜本的な対策を講じない限り、60年後には多くを消失してしまう



※ 2018年現在に状況について
穀物価格も比較的安定したことで、以前のようなスピードにてランドラッシュ(世界的な土地獲得競争)は行われていないが、報道される機会が減っただけで、中東諸国・中国による農地購入・大型投資は今でも進められている。

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