イクラス社では、尾道市内に設置した大型ドーム内の陸上プールにて、トラフグやオコゼといった付加価値の高い沿岸魚を「陸上養殖」している。
一般的な魚の養殖の場合、海に面した所に “いけす” を設置する海面養殖が主流だが、エサの残りかすや糞・尿・アンモニア等の有機物が海洋を汚染し、赤潮発生といった環境汚染問題を引き起こす原因にもなってきた。
しかし同社では、陸上の巨大なエアドームハウス内に水槽を設置し、魚の排泄物やエサの残りかすは、特殊ろ過装置で除去している。
また糞尿から発生するアンモニアは、微生物や藻類を活用しながら分解させ、きれいになった海水を水槽に循環させて再利用している。現在は、フグやオコゼを養殖しているが、ヒラメやクエも可能だという。
体重約100グラムの稚魚を国内の専門業者から調達し、それを半年余りかけて800グラムまで大きくして出荷する計画。同時に、卵のふ化から自社で一貫生産する研究も開始した。
こうした養殖方法には、施設設計やえさの作り方・与え方、照明・水温管理の方法といった、様々な技術ノウハウが必要となり、例えばオコゼでは、約3年かかるとされる飼育期間をほぼ半減し、一定の大きさにそろえる技術も確立している。
閉鎖空間での循環養殖システムの場合、外部からの病気の持ち込みを防ぎ、薬品を使用しない安全な成魚を生産できることがメリットである。例えば、一般的な海面養殖の場合、病気等のリスクを考えて、エサに抗生物質のようなモノを混ぜる場合もある。そして最大のメリットが、高品質な商品を安定供給できる点といえるだろう。
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