産業用ガスのエア・ウォーター、カゴメの生食トマトを栽培する植物工場(安曇野市)を取得

 産業用ガス大手のエア・ウォーターでは、北海道にて太陽光利用型植物工場を運営しているが、今回、長野県・安曇野市の第3セクターである安曇野菜園のトマト栽培事業を、2011年4月1日付で取得した。

太陽光利用型植物工場の大型施設でもある安曇野菜園は、販売先に苦戦し継続的な赤字に陥っていた。同菜園の敷地面積は約10ヘクタール(10万1,770m2)、栽培用のガラスハウスの面積は約5ヘクタール(5万2,650m2)、約12万本のトマトが定植されている巨大施設である。

同社グループの株式会社エア・ウォーター農園における2つ目の大型生産施設の拠点として、農業事業を展開していく。譲受額は約4億6千万円。

同農園は、今後10年間の契約で安曇野市の指定管理者として運営する。パートを含む105人の従業員は継続雇用し、同農園で行ってきたカゴメ・ブランドで販売されるトマトの生産は続けていく。

その他、施設改善・生産性向上を目的に、細霧冷房装置や炭酸ガス供給装置を導入し、約1億円の追加投資を予定している。同社によると、3年後には黒字化し5年目に累積損失を解消する計画である。

エア・ウォーター農園の植物工場(北海道)について

 株式会社エア・ウォーター農園は、2009年11月に設立された農業生産法人。約7.1ヘクタールの太陽光利用型植物工場を、自己倒産した農業法人から引き継ぎ、約5億円を投じて再稼働させた。

北海道・千歳市でベビーリーフの生産・出荷を2010年の秋頃から開始。2011年4月からはトマト、リーフレタスの生産も行っている。

生産した野菜は、カゴメからトマト、エスビー食品からベビーリーフの栽培委託を受けるほか、自社ブランド品を生産・販売している。


 植物工場の施設には、エア・ウォーターが所有する産業ガスなどのノウハウや追加設備と、植物工場によるトマト生産を行うカゴメなどの栽培技術を導入した。複合環境制御システムを導入し、温室は、全てコンピューターによる制御が行われている。

夏はガラスに遮熱剤を塗り、冷水噴霧装置を稼働させるなどして温度を下げる工夫も行っている。室内のCO2濃度は1,000ppm以上を維持し、野菜の光合成を促進させている。

冬はガス暖房が稼働し、日中は室温を20℃前後に保つ。雪国でも年間を通じて安定生産を可能にしている。


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