ドバイの水耕・多段式/ハイテク施設栽培の普及計画。オランダ式の栽培方式を採用したEmirates Hydroponics Farmsについて

今までUAEの水耕栽培施設として、ミラク社などいくつかの企業をご紹介してきた(ミラク社の記事)。今回はドバイ市場を中心に、Emirates Hydroponics Farms に関する情報も掲載しておく。まずはドバイの食料市場全体について情報を整理した。
 
 
ドバイの農業分野・食料市場について
ドバイでは、2000年から10年間かけて「水耕・多段式のハイテク施設栽培(日本で言うところの太陽光利用型の植物工場にあたるかもしれない)」のモデルシティになる計画を立てた。ご存知の通り、金融危機の影響から計画は順調だとはいえないが、それでも水耕培施設も徐々にではあるが、国内に増えつつある。UAE全体の人口は2009年7月において、約470万人となっており、その78%は都市部に集中しているUAEの約1%にも満たない土地が農業用地として利用可能であり、農業分野で働く人は労働者の1.5%程と非常に少ないのが現状である
 
 
2009年において、ドバイの消費者は約10億ドルもの資金を輸入野菜・果物に使っている。ここ2年間で40%もの上昇率である。スーパーの売上高の8?12%が新鮮野菜であり、その50%以上が輸入商品である。また、多くの野菜・果物が取り引きされる場所として、Al Aweer市場があり、700もの小売業者や個人的な輸入業者が集まっている。最近、このAl Aweer市場周辺の人口が急増しており、積荷トラックはここ3年間で261%も増加しているようだ
 
 
水耕栽培施設について<Emirates Hydroponics Farms> 
UAEの90%の食料が輸入に頼っており、急増する人口と食料需要に対して、パキスタンの10万エーカー、スーダンの7万エーカーといった海外農地の獲得に乗り出していることは有名なことである。いわゆるランドラッシュ(土地獲得競争)と呼ばれているものである。
 
 
一方で国内の食料生産事業として、2005年に実験的にオランダ式の水耕栽培施設をオープンさせた。さらに2008年には、本格的な運営に乗り出すためにEmirates Hydroponics Farmsとしてリニューアルしており、現在ではUAEでも有数の大規模な水耕栽培施設となっている。ここでは、米食品医薬品局のバクテリア分析マニュアルに従い、日々の衛生管理も厳重に行われており、施設面積は2009年には1万平方メートル(1ha)にも達している
 
ドバイの水耕・多段式/ハイテク施設栽培の普及計画。オランダ式の栽培方式を採用したEmirates Hydroponics Farmsについて
 
Emirates Hydroponics Farmsでは、水の90%が再利用・リサイクルされている。また一番高い所では、10段にも高く積みあげた多段式で栽培されており(一部の施設のみ)、10ガロンの水で1kgのレタスを栽培することができる。一方、従来の露地栽培の場合、砂漠の多い土地に作った灌漑施設を利用することで、同じ1kgのレタスに320ガロンの水が必要であると言われている。
 
 
UAE(ドバイ)は最も水の使用量が多い国の一つである。ドバイ市民は毎日一人当たり132ガロンを使用するのに対して、アメリカは78ガロン、ドイツは34ガロンとなっている。その中でも、ドバイの水使用量の50%が農業用水として使用されており、農地に適さない砂漠の多い土地で、大幅に水の使用量を削減できる多段式のハイテク水耕栽培施設は大きな注目を集めている。また、中東地域全体として肥満や成人病患者が急増しており、医療費を削減するためにも、安心・安全で健康になるフレッシュな野菜・果物の生産には、今後も大きな投資が行われるだろう。
 
 
人口増・食料需要増の問題、土地や水の制約(砂漠地域)があり、UAE(ドバイ)・中東諸国は、世界中の食料関連技術の導入を進めている。もちろん、日本企業にとっても大きなビジネスチャンスがあるだろうが、残念なことに、UAE(ドバイ)の多段式・ハイテク水耕栽培施設では、オランダや欧州各国、オーストラリアといった企業の名前が挙がる一方で、日本企業の名前が挙がったことはない。もちろん、一部では実験栽培も行われているが(双日の記事)、日本企業は国内だけでなく、もっと海外市場への事業展開に力を入れるべきだろう。国内市場で実績をつくり、事業として安定的な収益を得るまでは海外展開を先送りにしていると、絶好のビジネスチャンスを逃すことになるだろう