エジプトでは、2004年からGDPを成長させるために積極的に海外投資を受け入れ、経済改革を進めてきたが、近年の景気悪化により2009年のGDPは4.5%と低迷しており、計画も遅延している。そして、同国の経済成長を左右するものが輸出政策である。よって、2009年には景気刺激策として輸出関連産業に27億ドル、そして現在では追加支援も含め、33億ドルの支援・補助金を捻出している。
エジプト国内の食料消費量はアラブ・中東の国の中でも、ナンバーワンである。その要因の一つとして急激な人口増加があるだろう。同国の食品消費量は2007年に約3400万ドルにも上り、2011年までには約4200万ドルにも膨れ上がる、と推計されている。しかし、こうした市場の拡大に対して整備が遅れているのが法的整備であり、現在でも違法性の高い事業が当然のように普及しているのが現状である。もちろん政府としても、こうした問題を解決するために、新たな政府の食品機関を設立して、その対策に乗り出している。
このように人口増加による国内市場の拡大とともに、海外市場をターゲットに多くのエジプト産の野菜・果物を輸出している。エジプトでは農地に適する部分が国土の5%しかないものの、気候には恵まれており、国内労働者の3分の1以上が農業・食品産業に従事している。主要な輸出品目は、トマトやジャガイモ、メロンやドライオニオン等であり、対象国は南部の地中海沿岸の国々(アルジェリア、イスラエル、ヨルダン、レバノン、リビア、モロッコ、シリアやチュニジア)、そして中東とEUである。
特にEUとは連携協定を結び、今後は野菜・果物の輸出量が2倍になるとの予測もある。このように土壌環境や農地には恵まれていない同国ではあるものの、国内の食料消費量の拡大や豊富な農業労働力、そして地理的には中東諸国やEUといった大きなマーケットにも近く、農業・食料ビジネスを展開する上でエジプトは魅力的な国の一つであるだろう。