京都大学の研究グループと、三菱ケミカル株式会社は共同にて、代謝工学とマルチオミックス解析を活用し、植物工場などの環境制御・養液コントロールなどによって栄養価の高い新しい機能性野菜(ホウレンソウ)の開発に成功した。
今回、今回開発した葉酸成分が豊富なホウレンソウは胎児の脳の発達に、そして、抗酸化物質としてはアントシアニンより強力であるものの、摂取することがなかなか難しかったベタシアニンが豊富な赤茎ホウレンソウは、抗老化などに機能があるものと考えられている。
図:(左)水耕栽培ホウレンソウ(三菱ケミカル社)と葉酸の化学式、(右)水耕栽培された赤茎ホウレンソウとベタシアニンの化学構造
概要
機能性食品の開発には、これまでは主に遺伝子組み換え技術が使われてきました。しかし日本では厳しい規制により、一般には流通していません。
そこで本研究では、すでに確立されている三菱グループの水耕栽培系を用い、その液肥の成分調整によって栄養価の高い新規機能性ホウレンソウの開発を試みました。
本研究グループは、まず葉酸を豊富に含むホウレンソウの開発を行いました。葉酸は代謝に必須であるばかりでなく胎児の脳の成長にも関与する重要な栄養素ですが、ヒトの体内では合成できないため食物からの摂取が必要です。
そこで、サラダホウレンソウの水耕栽培技術を用いて、葉酸を多く含むホウレンソウの開発を試みました。液肥にフェニルアラニンを添加した条件でホウレンソウを栽培したところ、通常の約2倍の葉酸量を確認しました。
植物が合成する色素成分は抗酸化力を高め、ガン細胞増殖の抑制にも有効と考えられていますが、さらに本研究は赤茎ホウレンソウに含まれる赤色色素成分の一部が、ベタシアニン系の化合物であることを同定しました。
そして、スクロースを添加した条件で赤茎ホウレンソウを栽培したところ、通常の約5倍のベタシアニンが含まれていることを確認しました。
本研究成果は、代謝工学のこれまでのデータの蓄積活用とバイオテクノロジーにおけるマルチオミックス解析手法の融合によるものです。本研究手法は、今後の食用野菜の育種に大いに活用でき、一般市場への新しい高付加価値食品への貢献が期待されます。
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