豊田通商は、クロマグロの完全養殖事業で近畿大学と技術協力提携を結んだ。長崎県・五島列島の五島市に、世界で初めてとなる完全養殖稚魚の中間育成会社「ツナドリーム五島」を設立。水産資源の枯渇が問題視されるなか、日本の食文化に欠かせないマグロに関して、親魚の産卵からふ化、飼育、養殖用稚魚の出荷までを人工的に循環させる。国産水産物の安定供給につなげるという。
新会社のツナドリーム五島は、豊田通商の100%出資で、資本金・資本準備金は3000万円。五島列島・福江島に育成用の海上生簀(いけす)を設置した。近畿大学から人工ふ化して体長約6cmに育ったクロマグロの稚魚と、育成のためのノウハウの提供を受け、体長30cm(500?700g)のヨコワと呼ばれるサイズまで育てる中間育成を手掛ける。ヨコワはその後、養殖を経て出荷されるほか、産卵用の親魚に育てられる。
クロマグロの養殖は従来、海洋で捕獲した天然ヨコワを使って育てていたが、乱獲による天然資源の減少や、漁獲量が安定しないといった課題があった。近畿大学は、1979年に天然稚魚から飼育した親魚の産卵と、人工ふ化・飼育に初めて成功。2002年には人工飼育した親魚が産卵する世界初の完全養殖技術を確立した。2009年には約4万匹を国内の養殖業者へ出荷している。
クロマグロ完全養殖事業は中間育成に大型いけすなどの施設が数多く必要で、近畿大学は生産数拡大のためには学外の協力が不可欠と判断。近年、食料分野で安定供給に向けた事業を強化している豊田通商のビジネスの方向性と一致し、技術協力で提携することになった。両者は新会社設立をスタートとして、今後、クロマグロ完全養殖の商業化を推し進めていく。同社によると「当初は社会貢献的な性格が強い」(広報・IR室)が、08年には農業法人を設立し宮城県でパプリカの生産を手掛けるなど、多角化を推進している。
<日経BP環境経営フォーラムより>
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