ハワイでは食料品の約8割を輸入に頼っています。2020年までに食料自給率を現在の2倍に引き上げる政策のもと、生産性が高く環境に優しい有機循環農業「アクアポニックス」への期待は大きく、官民一体となって、大学での研究やアクアポニックス農家への積極支援が継続されています。
今回は、ハワイのアクアポニックス農家の経営状況と、野菜の流通についてレポートします。
アクアポニックスで育てられる野菜
商業アクアポニックスで栽培する野菜は、リーフレタスを主とする葉物野菜、ハーブ類です。成長が早くニーズが安定していることが主な理由。
アクアポニックスには、6種類の栽培システムがあり、各々の用途・目的に応じて適合するものが選定されています。
※ 写真はNFTシステム(Nutrient Film Technique), DWCシステム(Deep Water Culture)の様子
一方、家庭菜園では、裏庭でトマトやキュウリなどの果菜類、ラディッシュ、イモ、ウコンなどの根菜類、なかにはパパイヤやヤシの木まで、様々な品種が育てられています。
日本と同様、各々が自由に好きな品種の栽培を楽しみ、自家消費されています。
アクアポニックス野菜の流通状況
朝に収穫された野菜は、すぐに農場併設の作業場で洗浄、袋詰めされ、当日の正午には保冷トラックで販売先へと運ばれます。農家によっては、作業場で加工(カット)するケースもあります。
<A農場の販売先>
野菜:フードランド(29店舗)、ダウンツーアース(5店舗)、ホールフーズ(2店舗)等のスーパー、ヒルトンなどのホテル、レストラン等。
卸価格は、1ポンド(約454g)当たり約3~4ドル(カットされると9ドル)。1年前の調査では、1ポンド当たり2ドル後半が平均でした。ちなみに、アメリカ本土から入ってくるリーフレタスは、1ポンド当たり約1ドル。
パッケージやPOPには「アクアポニックスで育てられた野菜」と表記されており、品質の良さがプレミアム価格につながっています。
左の写真は、USDA(アメリカ農務省)オーガニック認証の証明書。アクアポニックス農家の多くは、オーガニック認証を取得しています。
日本では水耕栽培である限り、モヤシなどの一部の品目を除き、有機認証を取得することができませんが、海外の一部では取得が可能です。当然ながら米国本土でもアクアポニクスであれば取得可能です。
魚(ティラピア):主にチャイナタウンにあるスーパーやレストランが農場まで買いにきます。1ポンド当たり6~8ドルで卸されています。
アクアポニックス農家の売上
今回はハワイの3農場を訪問しました。売上は農地規模や販売状況により異なりますが、A農場では約1エーカーの農地で年商3千万円近くの売上があります。
1年前の訪問時と比べると、単価の上昇に加えて、生産性もかなり向上していました。生産面は他の農場でも改善が見られ、基本的な施策で効果はまだ上がりそうです。
訪問した日は、たまたま政府からの視察団も来ていて、オーナーへ補助金の受給を勧めていましたが、「補助金は必要ない」と断っていたのが印象的でした。就農時から補助金には一切頼らずに経営しているそうです。
アクアポニックス野菜への需要は大きいとのことで、今年中に農地も拡大予定とのことでした。今後の展開も注視していきます。
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