豊田通商は、ヤンマーアグリジャパン株式会社(YAJ)、住商アグリビジネス株式会社と共同し、自社ブランドの多収米「しきゆたか」の収量増に向け、アグリテック活用による低コスト先進農業システムの実証実験を開始した。農業法人「株式会社サンフレッシュ海津」の協力の下、岐阜県海津市において2020年6月~11月の期間で実施する。
1.背景
豊田通商は、堅調な成長が続く国内業務用米需要への安定供給を目的に、2015年より多収米「しきゆたか」の商業栽培を開始し、以降その普及に向けた取り組みを進めてきました。
「しきゆたか」は、一般的な品種よりも約30%の収量増を全国域で安定して達成しており、国内主食用の総需要のうち約40%を占める中食・外食ニーズに支えられて、年間生産量は約1万トンに達しています。(2019年末時点)
「しきゆたか」の生産量を拡大していくには、施肥管理を含めた収量増のアプローチが重要ですが、水田のNDVI(正規化植生指数)(※2)を正確に把握し、品種の特性を踏まえた肥料を適量散布することが難しい(生産者の経験や感覚に頼るため施肥量に過不足が発生)という課題がありました。
2.実証概要
今回の実証では、⽔⽥全体の稲の⽣育状況をドローンで計測し、NDVIに応じて追肥量を調整するYAJのリモートセンシングと可変追肥システムに加えて、被覆肥料(肥料成分をコーティングし、⻑期間効果を持続させる肥料)の溶出をモニタリングにより推定し、適切な追肥量を計算する住商アグリの肥料溶出予測モデルを組み合わせ、⽔⽥のNDVIに応じてピンポイントに、適切量を追肥します。
また、トヨタ⾃動⾞株式会社の「リアルタイム⼟壌診断システム」と、従来、住商アグリが⾏ってきた⼟壌診断を組み合わせ、住商アグリが設計した「しきゆたか」専⽤肥料を使⽤します。これらの施策により、従来の栽培⽅法による「しきゆたか」の収量と⽐べて10%以上の収量増を⽬指します。
本システムは、従来のしきゆたか⽣産コストに対し、10a当たり4,000円以下のコスト増(※3)で抑えられ、3%以上の収量増になれば⽣産者の収益向上に寄与できると試算しています。
今回の実証で効果を確認後、2021年作付け分より、しきゆたかを栽培する⽣産者や集荷事業者向けに本システムの導⼊を提案するとともに、株式会社⽔稲⽣産技術研究所や農協において、本システムを活⽤した栽培指導の効率化に取り組む予定です。
※2 植⽣の分布状況や活性度を⽰す指標
※3 本システムを、10haのほ場に導⼊した場合のコスト
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