有用な遺伝資源の発掘にむけて、アジア諸国との国際共同研究へ

 農林水産省はイネなど作物の品種改良に使う有用な遺伝資源の発掘事業を拡大する。2014年度から5年間で、ミャンマーやラオスなどを候補に、5カ国以上と国際共同研究を始める。

遺伝資源を保管する国内施設も増強し、1万点以上増やす計画。温暖化に強い新品種などの開発につなげ、国内農業の競争力を高める。

国内では農水省所管の農業生物資源研究所などが、約22万点の植物遺伝資源を保存し、約3分の2を海外から集めている。品種改良の例には、いもち病に強いフィリピンの遺伝資源を使ったイネ「コシヒカリ新潟BL3号」などがある。

農水省は今後5年で5カ国以上と国際共同研究に関する覚書を締結し、相手国の保存施設にある植物遺伝資源の特性を解明するための研究に着手、有用な遺伝資源を1万点以上探す。
共同研究の相手国はミャンマーやラオス、ベトナムなどが候補に挙がっている。

 アジア地域はナスやキュウリ、サトイモなどの原種が集まり、イネの栽培も盛んだ。日本は6月、世界100カ国以上が参加する「食料・農業植物遺伝資源条約」(ITPGR)を批准し、28日に正式加盟した。

アジアを中心に遺伝資源の権利意識が高まり囲い込み傾向が強まる中、利益配分の仕組みを取り入れつつ、複数の国を交えた情報共有や取引が円滑にできるようになった。

ただアジアの途上国ではITPGRに加盟しているものの、情報共有・取引制度への遺伝資源の登録が進んでいない。日本は国際共同研究によりアジア諸国が保有する遺伝資源の特性を解明し、有用遺伝資源の入手につなげる。入手した遺伝資源は、国内の種苗会社や公設試験場に提供し、新品種の積極的な開発を促す。