植物工場野菜に食品小売業界が主導する「グローバルG.A.P.」は必要?AVFサミットから考える持続可能な農業③

消費者に近い・川下に位置する”食品商社や食品小売企業”が先頭に立って、安全性の認証規格づくりが行われている。こうした現状から、川上に位置する生産者に多くのしわ寄せが集まっていることは確かである。

都市型農業・植物工場(垂直農場)でも、こうした規格への参加を促しているが、果たして、他の農産品と同様の取り扱いにて流通させて良いのだろうか?
全員に利益が分配される、サステナブルな新しい「食のバリューチェーン・仕組みづくり」が必要ではないだろうか。

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1. 米国における「食品の安全性」

 1906年に出版されたアプトン・シンクレアの小説『ジャングル』は、米国食品産業における「安全性の時代」の始まりを告げた。

シカゴの食肉処理場の現実が生々しく描かれ、「腐った肉を切り刻みソーセージに混ぜ込む話」、「質の悪いソーセージをグリセリンに漬け込み再生させる話」、「倉庫に積まれた肉の上をネズミが走り回っている話」などが告発された。

朝食中にこの小説を読んでいた当時の大統領セオドア・ルーズヴェルトは、目前の皿に盛られたソーセージを即座に窓から投げ捨て、今日の規制(*1)の起源である連邦食品・薬品法の立法手続きに取りかかったと言われている。

 この当時の規制システムは、上記のような経緯もあって、「食品加工・卸売業界」の悪徳行為を取り締まるという性質が強かったが、その後100年以上を経た現在の規制システムは、むしろ「農業生産業界」への比重を強めてきているように思われる。

実際、AVF Summit 2017において行われたプロデュース・マーケティング協会とグローバルG.A.P.北米支社による講演は、そうした傾向を感じさせるものであった。


*1: 連邦食品・医薬品・化粧品法(FFDCA)に基づく、食品医薬局(FDA)を中心とする規制システム。

2. 科学を制するものが規制を制する

 プロデュース・マーケティング協会の科学技術部門の代表者であるB.ウィタカー氏は、「科学による安全認識」の重要性を強調した。

「人間が関与する限り、全ての農産物に一定のリスクが存在する」ため、「農産物それ自身のリスクよりも生産・流通過程のリスクに目を向けるべき」というのが、同協会の主張である。

植物工場野菜に食品小売業界が主導する「グローバルG.A.P.」は必要?AVF Summit 2017から考える持続可能な農業③プロデュース・マーケティング協会のB.ウィタカー氏[筆者撮影]


彼らは、「科学的手法により生産・流通過程を評価し、リスク量が低く評価された作物を食べていく」という社会システムの構築を目指しており、AVF Summit 2017で講演を行うのも、垂直農業(植物工場)分野の生産者から賛同を得るために他ならない。


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投稿者プロフィール

八隅 裕樹
八隅 裕樹
・神戸大学経営学部 卒(2012年)
・兵庫県信用農業協同組合連合会 入会(2012年~現在)
・コロンビア大学ビジネススクール 客員研究員(2017年~現在)

【資格】
・中小企業診断士 ・応用情報技術者

【研究】
・農業、食品産業 ・農業金融、協同組合金融 ・金融・経済史