カタール・中東における農業戦略からみる「コンテナ式植物工場」の需要・ニーズについての考察

先日掲載した記事(コンテナ型の植物工場をカタールへ販売)の「コンテナ式植物工場」は、断熱仕様のコンテナ(長さ12.2メートル、幅2.4メートル、高さ2.9メートル)に、空調設備や、水を濾過(ろか)して再利用する水処理設備、省エネの発光ダイオード(LED)などを使った照明設備を完備しており、最大2,000株のレタスや小松菜などの葉物野菜を栽培するこができる(1日当たりの収穫量は50株)
 
コンテナ型の植物工場をカタールへ販売:三菱化学・フェアリーエンジェル・シーシーエス
 
主に商用電源を使用しながら、太陽電池やリチウムイオン二次電池などの併用型となっており、価格は1台5000万円ほど。さらに、太陽電池やリチウムイオン電池を増やしたシステムとなると、6000〜7000万円ほどになるという。
 
 
今回の納入コンテナの場合、例えば1株を500円で販売した場合(一日50株、365日稼働させたと仮定)、売上が年間で900万円強となり、電力コスト・人件費などを考えると、純粋にビジネスとしては難しいものがあるかもしれない。日本ブランドの果物の場合、ロシアや香港、北京・上海などの百貨店では、日本における販売価格の10倍もの価格設定がされている所もあるので、野菜でも売り方次第では、多少は高値で販売可能ではあるだろう。
 
 
太陽電池とリチウムイオン二次電池システムは三洋電機が、LED照明装置はシーシーエスが、栽培ノウハウはフェアリーエンジェルが、温度管理コンテナは日本フルハーフがそれぞれ開発・提供した。今回のコンテナ式植物工場を中東を中心に年間10基ほどを販売する計画を立てているようだが、その第一号の販売国である「カタール」の農業事情について、ここでは少しまとめたいと思う。
 
 
中東諸国においても、国によって農業戦略が異なる。それは栽培環境(気候や土壌条件など)だけでなく、資金的な余裕(石油資源などによる収入額)や文化・歴史なども関係しており、砂漠が多い中東諸国が全て同じような農業政策(戦略)を行っているわけではない点には注意が必要である。今回はカタールについてのみ記載した。
 
 
カタールは、石油よりも天然ガスの埋蔵量が多く、特に天然ガス(液化天然ガスLNG)を輸出しており、ガス産業が主要産業となっており、国内における農業従事者は非常に少ない。農業分野における労働人口は3000人ほど(2004年FAOのデータによる)。総人口が62万人を占める中で、国内における農業従事者は、人口比率に対してわずか1%程度である。
 
 
また、中東における大国のサウジアラビアと比較すると、カタールは経済規模も小さいが、一人当たりGDPで見ると、GCC諸国の中でトップ(2006年)となっており、非常に豊かな国であることが分かる。 ※ GCC諸国:サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール、バーレーン、オマーンの六ヵ国。
 
 
カタールは農業資源には恵まれておらず、ナツメヤシで1万7000トンと少し多いものの、トマトやメロン、ナスといった農作物は年間:3500〜5000トン程度の収穫量である(2005年FAO)。特に、米や小麦といった穀物の輸入依存度が高く(3000〜3500トン程度を輸入している)、生鮮野菜も17050トンの輸入(2004年FAO)していることから、野菜の国内消費に対して、その多くを他国からの輸入に頼っているのが現状である
 
 
中東諸国は石油資源などの収入の多くを、他国からの食料輸入・確保に充てている国が多く、中でも人口増加・水資源の確保・砂漠化(土壌が適さない)などが原因となり、サウジアラビアやUAEでは、自国内での栽培には力を入れず、安く余っている海外農地の確保を優先している国も現れている
 
 
サウジアラビアでは、インドネシアで160万haスーダンで1万haの農地を借り上げ、UAEでは、パキスタンから50万haの土地を購入、スーダンからも40万haの土地取引契約が成立している。その国の法律によって土地の長期リース契約を結ぶこともあれば、実質的な土地の購入を政府と民間企業が共同で行っているケースもある。
 
 
上記のように、サウジアラビアやUAEは、アフリカ大陸だけでなく東南アジア(イスラム圏)の海外農地獲得に向けても、積極的に動き出している。では、カタールはどうだろうか?
 
 
公開されている現時点のニュースでは、そこまで積極的ではないものの、既にスーダン国内への農業投資を目的とする共同事業を設立させており、やはりカタールでも、国内農地での栽培よりも、安く手に入る広大な海外農地の獲得を、徐々にではあるものの進めているようだ。ただし海外農地における「異常気象による農作物の大打撃、現地労働者の反発、政治的な問題・状況の変化」などにより、期待していた食料が確保できなくなる可能性は大いにある。
 
 
こうした食料安全保障の観点からも、さらには世界的な異常気象にも対応できるように、自国内でも野菜栽培システムを、いくつか稼働させておくことは十分に考えられる(もちろん、推測の域を出ないが)。よって、資金的な余裕があるカタールでは、今後もこのような植物工場(ある程度の閉鎖空間による農作物の栽培技術)に関連した技術が必要とされるのではないだろうか。引き続きカタール政府の農業戦略を観察し続け、変化があれば情報を掲載していきたいと思う。
 
 

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植物工場・農業ビジネス編集部

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