カタールの農業統計。生鮮野菜1万7千トンを輸入、国内農業人口は3,000名

(2017年7月28日に記事修正・更新しました)
 中東諸国においても、国によって農業戦略が異なる。それは栽培環境(気候や土壌条件など)だけでなく、資金的な余裕(石油資源などによる収入額)や文化・歴史なども関係しており、砂漠が多い中東諸国が全て同じような農業政策(戦略)を行っているわけではない点には注意が必要である。

カタールにおける農業従事者は統計上では3,000名

 カタールは、石油よりも天然ガスの埋蔵量が多く、多くの液化天然ガスLNGを輸出しており、ガス産業が主要産業となっている。国内における農業従事者は非常に少なく、農業分野の労働人口は統計上では約3,000名となっている(2004年FAOデータ)。

総人口が75万人(2004年統計、最新の2016年統計では人口は257万人に急増)のカタールでは、国内における農業従事者は、人口比率に対して1%以下となる。

ただし、農業分野における網羅的な統計調査(国のセンサス調査)は行われておらず、推計数値や古いデータのままとなっている場合も多いことから、参考程度にとどめる必要がある。

また、中東における大国のサウジアラビアと比較すると、カタールは経済規模は小さいが、一人当たりGDPで見ると、GCC諸国の中でトップ(2006年)となっており、非常に豊かな国であることが分かる。

※ GCC諸国とは、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール、バーレーン、オマーンの6カ国を示す。

トマトなどの園芸野菜、年間の生産量は5,000トン以下。生鮮野菜も17,050トンを輸入

 カタールの農業生産について、一部では施設園芸も稼働しているが、ハイテク植物工場のような施設栽培は、ほとんど行われていない。作物別でみると、デーツ(ナツメヤシ)で17,000トンで少し多いが、トマトやメロン、ナスといった農作物は年間3,500~5,000トン程度が、国内で収穫されている(2005年FAOデータ)。

特に、米や小麦といった穀物の輸入依存度が高く(3,000~3,500トン程度を輸入)、生鮮野菜も17,050トンを輸入(2004年FAOデータ)していることから、その多くを他国からの輸入に頼っているのが現状である

カタールの農業統計。生鮮野菜1万7千トンを輸入、国内農業人口は3,000名カタールの農業統計。生鮮野菜1万7千トンを輸入、国内農業人口は3,000名

カタール国内の施設栽培の様子。ピーマンやキュウリ、トマトやナスといった園芸作物を生産し、国内スーパーに販売している事例もあるが、施設内の技術導入は進んでいないので収量・品質にも問題あり。写真:弊社による現地取材より