NYC AgTech Week 2017の報告レポート第2弾。植物工場のような先端農業ビジネスに挑戦する起業家が増える一方で、CSAや農業ボランティア等、健康で持続可能な農業/ライフスタイルを求める消費者も多いのが米国の都市部である。今回はLOHAS型の都市農業について紹介する。
・第1弾レポート 都市型農業の未来は明るい?! NYC AgTech Week 2017から考える都市農業の「今」①
1. 広がりを見せるLOHAS型の都市農業
都市農業を考えるにあたっては、健康的な生活や社会の持続可能性を志向する「LOHAS型」の事業を無視することはできない。
地域支援型農業(*1)や地域通貨を利用した農産物の売買(*2)などはその代表格と言え、近年、米国やオーストラリアなどでも広がりを見せている。
米国人の約20%がLOHAS的な志向を持つとも言われる中、LOHAS型の都市農業は「NYC Agtech Week 2017」においても大きな存在感を示していた。
写真: 米国ニューヨークCSAにて購入した野菜セット。季節に応じて様々な種類の野菜を購入することができる。
*1: 地域支援型農業(CSA:Community Supported Agriculture)
契約に基づいて、農繁期に地域住民が農作業を手伝うなどの形が多い(例:農繁期の間に毎週4時間農作業に従事など)。収穫作業は消費者自身が行うため、収穫や選果、配送の作業が軽減されるほか、流通段階での廃棄物等も最小限に抑えられることが特徴。
生産者に対して、事前に年会費を支払うケースも多く、天候不順による品目・収量減の可能性も理解し、リスクシェアしながら地元の生産者を支援していく考え方である。
近年では生産者と消費者の間に、お互いを支援するNPO組織が存在することもあり、複数の地元農家から収穫した農作物を1つの商品として、自宅に宅配するサービスもある。そのほか、地元レストラン等の業務用CSAもあり、幅広い事業サービスが展開されている。
*2: 地域内でしか使うことのできない通貨を発行することで、地域外への資金流出を防ぐ取組み。農産物の地産地消を促進することができる。英国のブリストル(Bristol)が導入した「ブリストル・ポンド(Bristol pound)」などが有名。
2. 価値観の多様性、都市型スローライフ消費者の存在
ニューヨーク市ブルックリン区のFeedback Farmsは、そうしたLOHAS型の都市農業の例であると言ってよいだろう。彼らは、都市生活と農業との共生方法を探るため、ブルックリン区にて4つの農場を運営している。
地域住民交流を目的とする市民農園が2つ、レストラン向け貸農園が1つ、公立学校向け教育用農園が1つというのが、その内訳である。
いずれの農場も、家庭菜園の延長といった趣きであり、それがニューヨークで行われていること自体は興味深いものの、設備やビジネスモデルの面で模倣困難な強みを有しているとは言い難い。
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投稿者プロフィール
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・神戸大学経営学部 卒(2012年)
・兵庫県信用農業協同組合連合会 入会(2012年~現在)
・コロンビア大学ビジネススクール 客員研究員(2017年~現在)
【資格】
・中小企業診断士 ・応用情報技術者
【研究】
・農業、食品産業 ・農業金融、協同組合金融 ・金融・経済史
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