シンガポールでは政府機関と民間企業による植物工場の研究開発・実験的な栽培が行われている。昨年、政府はLED(半導体)やバイオテクノロジーといったハイテク分野が切り開く新事業として植物工場に力を入れることを発表した。
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政府では、高さ6mの多段式・植物工場のプロトタイプ(試作品)を航空機メーカーのDJ ENGINEERING社とAgri-Food & Veterinary Authority(AVA)が協力して開発・設置した。
生産品目は「葉野菜」。天井に設置した雨水タンクからパイプ上に水が流れ、多段式の栽培棚が回転する仕組みになっている。電力・エネルギー面でもメリットがあり、上部の雨水タンクから水を循環させるために、1時間当たり1kWのみを使用するだけで受分である、という。
同社によると、本システムを利用すれば従来型の土壌栽培より、少なくとも5倍の生産効率が可能となり、例えば5haに導入した場合、従来型の農業ではリーフレタスの生産量が500トンのところが、2,500トンまで増産可能と試算する。
現在は、プロトタイプ(試作品)にて実験栽培中であり、様々なデータを取得・解析している。その後は、栽培システムを販売する計画であり、既にSky Greens社という新会社をを設立した。
設備プラントについて、1セットを1万ドル程度での販売を想定している。1つの多段式・栽培ユニットにつき22~26段までは設置可能である。
新会社であるSky Greens社は、リーフ野菜を生産するため、シンガポールのAgrotechnology Parks内の敷地に、約3.5haの土地利用を申請している。
まずは、レタスや中国キャベツなどを生産し、今年にはスーパーマーケットに実験販売する計画である。今回の植物工場には、国家開発省(Ministry of National Development/MND)の大臣も視察しており、こうした多段式・植物工場技術は「葉野菜の自給率10%という目標を達成することに有力な技術である」と発言している。
シンガポールにおける現在の自給率は7%となっている。
シンガポール国内の葉野菜生産量は8,000トン以上
葉野菜の生産企業(農家)はシンガポールのLim Chu Kangエリアに集中しており、現在は37のリーフ生産農家が存在し、2006年に8,300トン、去年の1月から9月の期間に7,100トン、と安定的に生産を行っている。
政府は水の自給率向上も重要な国家戦略の一つと考えており、完全循環型の多段式・水耕栽培に期待を寄せている。今後も、アグリ・フード分野を担当するAgri-Food & Veterinary Authority(AVA)だけでなく、Urban Redevelopment Authority(URA)やSingapore Land Authority(SLA)など、アーバンファーム(都市型農業)実現のために、様々な政府系機関が連携して支援していく、という。