ユシロ化学工業、ビタミンB2を活用した光触媒ジェンタミンを開発。新型コロナや食中毒菌にも効果あり

ユシロ化学工業株式会社は、新型コロナウイルスに対して99.61%の感染力抑制効果のある、ビタミンB2を活用した可視光応答性光触媒(特許技術 以下、ジェンタミン)の開発に成功した。光触媒ジェンタミンは、安全性と殺菌性の両立を実現した技術です。

そのため、農業や水産業、食品、医療の分野で、農薬や防腐剤などの人の健康に悪影響や害のある化合物の代替として期待できます。

ユシロ化学工業、ビタミンB2を活用した光触媒ジェンタミンを開発。新型コロナや食中毒菌にも効果あり
可視光応答性光触媒ジェンタミン
ポイント
・ビタミンB2を活用した可視光応答性光触媒ジェンタミンを開発しました

・第三者機関(一般財団法人日本繊維製品品質技術センター)において、本光触媒の新型コロナウイルスの 感染力抑制効果を確認しました

・本光触媒は、太陽光だけではなく室内の白色LED光で反応します


光触媒ジェンタミンとは
ユシロ化学工業は、生体内の化学反応から着想を得て、ビタミンB2を活用した可視光応答性光触媒「ジェンタミン」を開発しました。ビタミンB2は、牛乳や海藻やアーモンド等の食物に含まれる極めて安全性が高い化合物でありながら、光の照射により一重項酸素を発生させます。その酸化作用を利用して光線力学的療法や血液製剤の浄化などに応用されています。

一方で、従来の技術では太陽光レベルの強い光エネルギーが必要であり、実用範囲が医療分野などに限定されていました。そこで、ユシロ化学工業は、生体酵素に学び実用的な光触媒の実現を目指しました。

鋭意検討の結果、ビタミンB2の潜在能力を引き出し、屋内光レベルの微弱光で酸素から効率的に強力な活性酸素(過酸化水素 or ヒドロキシラジカル)を発生させることができる技術の開発に成功しました。

本組成物を対象物に塗布し、室内の白色LED光の微弱光(500lx程度)を当てることで、細菌やウイルス、臭気物質などの酸化分解が可能です。なお、安全性の高い原料で構成されていることに加え、体内は光が当たらない環境であるため、万が一体内に入った場合でも、光が当たらないため殺菌効果を発現しません(図2)。

ユシロ化学工業、ビタミンB2を活用した光触媒ジェンタミンを開発。新型コロナや食中毒菌にも効果あり
図2 ジェンタミンが殺菌性と安全性を両立する理由
本光触媒は、第三者機関(一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター)の試験において、新型コロナウイルス以外にも、インフルエンザウイルスや、アルコールに耐性があるネコカリシウイルスに対する有効性を確認しています。

さらには、大腸菌や黄色ブドウ球菌に対する殺菌効果(当社試験結果)や、第三者機関(一般財団法人日本食品分析センター)において、悪臭物質として知られているトリメチルアミン、アンモニア、プロピオン酸、メチルメルカプタン、硫化水素などに対して消臭効果を確認しています。


新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を用いた試験結果
光触媒「ジェンタミン」を塗布した試験サンプルに感染価1.73 × 10^6 PFU/mlの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2 NIID分離株;JPN/TY/WK-521)を照度500 lx、LED照射条件下、6時間作用させました。

その結果、試験サンプルとして滅菌水を用いた場合や、ジェンタミンを暗所で作用した場合には、ウイルス感染価の減少は殆ど認められませんでした。

一方、ジェンタミンを塗布して光照射を行った条件では、暗所条件と比較して99.61%のウイルス感染価の減少が認められ、ジェンタミンの新型コロナウイルスへの有効性を確認しました(図3)。

ユシロ化学工業、ビタミンB2を活用した光触媒ジェンタミンを開発。新型コロナや食中毒菌にも効果あり
図3 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染価の測定結果


今後の展望
今後は、国連が提唱する持続可能な開発⽬標SDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発⽬標)への取り組みとして、ビタミンB2などの天然資源の活用や、光エネルギーを利活用することが可能な機能性材料の研究開発を通して循環型社会の実現に貢献して参ります。