シンガポール政府は先日、多段式による生産性を高めた植物工場への研究開発について、正式に支援を発表したばかりだが、政府としては野菜だけでなく、魚の国内自給率を高める取組みも行っている。
シンガポールのテマセク・ライフサイエンス・ラボラトリーでは、養殖魚としては世界2位の生産量ともいわれているティラピアについて、海水環境でも生育可能なティラピア品種の開発に成功した、という。
商業用としての大量生産はこれからだが、研究レベルでは確認された。
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日本では馴染みが無い淡水魚「ティラピア」だが、東南アジアや米国、アフリカなど世界中で消費されており、近年では、日本でもイオンが、主に台湾産のティラピアを “イズミダイ(ナイルテラピア)” として販売をスタートしている。
水温など環境変化には強いとされ、養殖だけでなく、野菜の水耕栽培を同時に行うアクアポニクスでも、育てやすく、成長も早いことから「ティラピア」が選択されていることも多いが、海水環境では育てることが難しく、高確率で死んでしまう。
シンガポールの研究所では、海水環境でも長時間、生育していたものを選び出し、5回の交配後に生まれたティラピアは、海水環境でも完全に生育することができるようになった、という。
今回の特殊なティラピア品種については、遺伝子組み換え技術は採用していない。我々が食べている野菜や果物と同様に、交雑によって特性を付与したり、高めたりしている新品種のようなものだ。
研究所では、野菜でも同様の研究開発を行っており、現代の異常気象や気候変動にも耐性のある新品種の開発を行っている。
シンガポール政府では、一部の食料(野菜や魚など)について2030年までに、国内自給率30%を達成する、という目標を打ち立てた。
先日には、多段式の植物工場への本格支援が発表されたばかりだが、海洋分野についても、通常の方法より10倍~15倍の生産性を実現できるような、新しい養殖技術を確立していく、という。
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