ウミトロン株式会社は、2018年度より愛媛県愛南町と進めてきた研究契約を満了し、スマート給餌機「UMTIRON CELL」に導入によって得られた効果について報告した。マダイ養殖における成長速度と飼料効率を改善し、高い水準で両立させることができた、という。
本実証で取り組んだテーマ
愛南町は愛媛県南部に位置し、温暖な気候とリアス式海岸が日本有数の養殖漁場を有しています。
水産養殖は町の基幹産業となっていますが、魚類養殖産業を取り巻く環境変化として、1:エサ価格の高騰による生産コストの増加、2:少子高齢化や人口減少による労働力不足が喫緊の課題として挙げられています。
ウミトロンはこの課題に対し、IoTやAI技術を活用することにより、データ分析に基づくエサやりの最適化と、遠隔でのエサやりによる作業軽減の実現を目指しました。
2018年度、2019年度の期間、愛南町の生産者協力のもと、スマート給餌機「UMITRON CELL®」や魚の餌食い状態を判定するAI「UMITRON FAI(Fish Appetite Index)」を活用した、課題解決の実証試験を進めてきました。
給餌の最適化試験
UMITRON CELLを活用したモニタリングとFAIによる無駄餌の検出機能に加えて、魚の餌食い状況に応じた遠隔操作により、給餌量を調整する生育試験を実施しました。
この条件では給餌の無駄だけでなく、機会損失を最小化することにより、飼料効率と成長速度を向上させることを狙いました。
同一時期に稚魚入れを行ない、UMITRON CELLの活用有無によって比較区を設定しました。年間単位の長期間の試験結果において、毎月の魚体サンプリングにて定量評価を実施した結果、試験経過1年後の4月時点では対象区と比較し、0.4kg程度の増肉効果が認められました。
具体的には従来は魚体重を1kg以上に成長させるために要した期間を4ヶ月以上短縮することに成功しており、成長速度の向上効果が得られております。
また、飼料効率も従来の増肉係数(1kgの魚体重増加に使用した餌量kg)は2.62であるのに対して、UMITRON CELLの機能を活用した場合の増肉係数は、2.06まで改善することに成功しております。
多くの養殖関係者の方々より、成長速度と飼料効率を高い水準で両立させた本成績に関して、反響をいただいています。給餌最適化に向けた取り組みを引き続き継続し、更なる改善を目指して参ります。
得られた効果
UMITRON CELLの遠隔操作や映像のリアルタイムで確認できる機能を活用することで、環境に優しく、労働環境を改善することが可能です。またリリース当初は最大容量200kgの餌タンクを、最大400kgに拡大することによって、餌補充をする頻度を削減し、燃料コストの削減に寄与します。
利用者の方々から「ウミトロンのシステムを活用して、給餌時間や頻度を調整した結果、早期生育に繋がり半年以上、早く出荷できた」「今まで知ることのできなかった無駄餌を、リアルタイム動画やUMITRON FAIで初めて気づくことができた」「生け簀まで陸からの距離が遠く、特に雨やシケの日の給餌負担が大きかったが、遠隔給餌により作業が楽になった」などのお声をいただいております。
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