神戸製鋼と高秋化学、藻の発生を抑える水耕栽培用資材を開発。植物工場でも活躍が期待

 株式会社神戸製鋼所と、めっき専業会社である株式会社高秋化学は、大阪府立環境農林水産総合研究所(大阪府環農水研)と共同で、神戸製鋼が2001年に開発した高機能抗菌めっき技術である「KENIFINE(TM)」(ケニファイン)を用いて水耕(養液)栽培向けに新たな防藻資材を開発した。

本製品の使用により、使用しない場合と比較し、藻の発生面積が1/10以下になる、という。

神戸製鋼と高秋化学、藻の発生を抑える水耕栽培用資材を開発。植物工場でも活躍が期待
ケニファインは、従来の抗菌技術(抗菌塗装・抗菌ステンレスなど)と比較し、10倍以上の滅菌スピードを持ち、今回、ケニファインを用いた農業用資材の開発・販売は初めてとなります。

主に植物工場などで行われる農作物の水耕(養液)栽培は、単位面積当たりの生産性が高い事や、土寄せ、施肥、除草など土耕に必要な作業が不要な事などから、特に地理的環境等による栽培不適地域に効果的な方法として注目されています。

世界の水耕栽培市場、2025年には約650億円まで拡大

 水耕栽培に関する設備の世界市場規模は、2025年には直近(2016年:約260億円)から2倍以上となる約650億円まで拡大する見通しです(Coherent Market Insights社調べ)。

しかし、水を常時使用する事から栽培パネル表面や栽培槽に藻が発生し、キノコバエ等の害虫の繁殖助長や栽培施設の景観劣化を招くと共に、藻の除去に多くの労力が掛かるといった問題があります。

この問題に対して、神戸製鋼では2013年に大阪府環農水研らと農業分野におけるケニファインの抗菌性や防藻性を検証し、水耕(養液)栽培の衛生管理手段として有効であることを確認しました。

ただし、ケニファインから溶出するニッケルイオンの作用により作物の生育への影響が認められた事から、本格的な利用には病原菌や藻の抑制効果に加え、作物の生育へ影響しない様にする必要がありました。


そこで2015年から、神戸製鋼、高秋化学および大阪府環農水研の3者で、ケニファインを使用した農業資材の実用化に向けた共同研究を行いました。

研究ではケニファインから溶出するニッケルイオンの影響を極力抑える様な最適形状、配置場所などについて実証試験を重ね(下記、資料)、その結果、ケニファインめっきを施した金属または樹脂製資材を栽培槽と栽培パネルの境界部に設置する事を特長とした新たな防藻資材を開発しました。

神戸製鋼と高秋化学、藻の発生を抑える水耕栽培用資材を開発。植物工場でも活躍が期待
これにより、藻の抑制を効果的に発現しつつ、同時にニッケルイオンの溶出による作物の生育への影響も無くす事に成功し、この度、実用化に至りました。本製品の特長として、防藻効果が長期に渡る為、経済的かつ設置も簡単に行う事が可能です。


高機能抗菌めっき技術『KENIFINE(ケニファイン)』について

  • 神戸製鋼が独自開発した高機能ニッケル系合金めっき技術で、同社ではこの技術を表面処理メーカにライセンス供与しています。
  • 従来の抗菌技術(抗菌塗装・抗菌ステンレスなど)に対して10倍以上の滅菌スピードとその後の菌の増殖を抑制する効果があり、また、かびの生育を抑制する作用は銀系抗菌剤の50倍以上です。
  • 1996年に大阪府で発生した病原性大腸菌O157による大規模集団食中毒事件を機に開発開始し、2001年に最初の技術供与先が決まり、2002年より量産を開始しました。
  • 現在14社にライセンス供与しており、高秋化学はその1社です。
  • 食品産業や医療、家電・エアコン部品、漁業用金網などの産業分野や、台所用品グルーミンググッズなどの一般消費財、さらにはアミューズメント分野などの民生用途など広く採用されています。



[関連記事]
抗菌めっき技術「ケニファイン」水耕栽培における藻・病害の発生を抑制
神戸製鋼所、高機能抗菌技術ケニファインを農業分野へ応用。新設した植物工場にも導入