矢野経済研究所は、2018年の養液栽培システム市場を調査した。2017年の国内養液栽培システム市場は、メーカー出荷金額ベースで、前年比103.2%の90億9,200万円であった。2018年の同市場規模は前年比100.5%の91億4,100万円の見込みである。
市場概況
国内の農業は担い手や後継者不足、農家の安定収入の難しさが言われて久しいが、これに加え、昨今では食に対する安心や安全への意識の高まりから、消費者が減農薬作物を求めることによるコスト高などといった多くの課題を抱えている。
こうしたなか、解決策の一つとして現在、養液栽培が注目されている。養液栽培では、天候や病害などによる連作障害を回避できたり、地理的環境等による栽培不適地域における栽培を可能にしたり、装置化・機械化により耕起(土を耕すこと)や除草、土壌消毒などの作業が不要となるため、労働の省力化につながる。
また周年栽培が可能になることで、単位面積あたりの生産効率が上がり、栽培される農作物の鮮度の高さを維持した出荷も可能になる。
■液栽培拡大の背景について
養液栽培が拡大する背景としては、(1)施設園芸面積の大規模化が進んでいること、(2)異業種からの新規参入が増えていること、(3)減反政策が廃止になり、稲作から園芸作物へ転換する産地が増えていること、(4)大規模植物工場の建設が増えていること、(5)身障者・高齢者向け施設に付帯する農業施設への導入が増加していること等が挙げられる。
将来展望
今後の養液栽培システムは、国内では農業分野へ新規参入する企業や新規就農者、稲作から園芸作物への転換地域など施設園芸の普及が進んでいない地域に普及していく見通しである。
また、中国などの海外では土耕栽培を行うことが難しい環境(砂漠、高気温地域)などに、養液栽培システムの導入が増えていくと考える。
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