アサヒグループホールディングスは、独自技術により開発したビール酵母細胞壁を用いた農業資材が、イネの根張りや免疫力を向上させる効果について、そのメカニズムの一部を解明した、という。同社では、ビール醸造副産物である「ビール酵母」を活用した農業資材開発を2004年より進めており、農産物収量の増加や、低農薬に関する研究を行っている。
【研究結果・考察】
ビール酵母細胞壁は、植物の根において、成長促進因子(オーキシン)の合成を活性化するとともに、成長抑制因子(サイトカイニン)の合成を抑制することにより、根の成長を促すことがわかりました。
また、ビール酵母細胞壁が、植物の免疫に関わる物質(アゼライン酸)の合成を活性化し、植物の免疫力を高めることがわかりました。ビール酵母細胞壁には、植物の病原菌と類似の成分が含まれていることから、根や葉に付着することで、植物が病気に感染したと勘違いして、このような反応が起きると考えられます。
【考察・まとめ】
今回、ビール酵母細胞壁が、オーキシンやアゼライン酸など植物の成長や病気への耐性に関与する成分の生合成に影響を与えることがわかりました。病気への耐性を向上させる反応は、ビール酵母細胞壁に含まれる成分が植物の病原菌がもつ成分と類似しているため、その成分に触れたときに植物が病気に感染したと勘違いするためと考えられます。
本研究からメカニズムが明らかになった、ビール酵母細胞壁による植物の根の成長促進効果は、気象や土壌などの悪環境下での安定した農作物の生産を可能にすることが期待されます。
また、植物に備わる免疫力を向上させることで、化学農薬の使用回数を削減し、安心安全かつ持続可能な農作物の生産が期待されます。
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