三菱マテリアルの連結子会社である三菱伸銅は、宮城県南三陸町におけるギンザケ養殖の支援プロジェクトについて、独自開発の魚網用銅合金線「UR30ST」の提供を通じて、日本銅センターおよびICA(国際銅協会)とともに参画した。
宮城県震災復興事業の一環である本プロジェクトでは、宮城県南三陸町に所在する宮城県漁業協同組合志津川支所戸倉のギンザケ部会が主体となり、魚網用銅合金線の防汚性を活用した、効率的かつ長期継続可能なギンザケ養殖システムの確立を目指している。
国際連合食糧農業機関(FAO)の「2012年世界漁業・養殖業白書」によると、世界の天然魚年間漁獲量は、約10年前にピークを迎えた後、海洋資源の枯渇や各種規制により若干減少し、現在約9千万トンで推移しているが、養殖魚の年間生産量は1990年ごろから増え続け、現在約6千万トンと全漁獲量の4割までに拡大している。
世界人口の増加が予想される中、安定的な食料の確保には、持続的発展が可能な養殖魚生産の拡大が不可欠である。
三菱伸銅が魚網用に開発した銅合金線「UR30ST」は、銅の持つ抗菌力により藻・貝類の付着を低減する防汚性を有するため、藻類などが引き起こす網の目詰まりによる酸欠や、ブリ類で問題となるハダムシの発生を抑え、養殖魚の成長を促すことができる。また、魚網への防汚剤塗布や、養殖魚への抗生物質の使用が抑制できるなど、より自然に近い環境で養殖が行えるのが特徴。
また「UR30ST」は優れた強度と耐食性・耐久性を備えているため破れに強く、特に海外ではトドなどに網を食い破られ、養殖魚が逃亡する問題の解消に寄与しており、国内だけでなく、オーストラリア、チリ、中国において、すでに400基以上の養殖用魚網として採用されている。