神戸製鋼所、高機能抗菌技術ケニファインを農業分野へ応用。新設した植物工場にも導入

 神戸製鋼所は1月23日、伊丹市の完全人工光型植物工場が導入した高機能抗菌技術KENIFINE(ケニファイン)を公開した。ニッケル合金の粉末を混ぜた溶液を床や壁にスプレーし、カビの発生や病原菌の繁殖を抑えられるという。これまで食品工場や家電、台所用品などに幅広く使われてきたが、農業分野の採用は初めて。

ケニファインは2001年に、めっき技術として開発されたもの。従来に比べ滅菌を10倍以上速め、カビの抑制力を50倍以上に高める効果がある、という。本技術を植物工場の企画などを手掛けるTJクリエイト(伊丹市)が、13年11月に稼働した植物工場に採用し、12月から市内のスーパーに野菜の出荷を開始している。

神戸製鋼所、高機能抗菌技術ケニファインを農業分野へ応用。新設した植物工場にも導入神戸製鋼所、高機能抗菌技術ケニファインを農業分野へ応用。新設した植物工場にも導入

高機能抗菌めっき技術『KENIFINE(ケニファイン)』の
植物プラントへの初採用について

 株式会社神戸製鋼所は、同社が開発した高機能抗菌めっき技術「KENIFINE®(ケニファイン)」の様々な用途を探求することで、現在、飲食品や医療福祉、電機・空調、一般消費財、漁業などの分野で、優れた抗菌技術として利用を広めています。

昨年5月に発表の通り、地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所、および森村商事株式会社と共同で農業分野におけるケニファインの抗菌性や防藻性を検証し、水耕(養液)栽培の衛生管理手段として有効であることを確認しました。

このたび、兵庫県伊丹市で、地元経済の活性化や日本の食料自給率の向上などを目指して植物工場プラントを新設した田中住建株式会社グループの株式会社TJクリエイトに、ケニファインを農業分野としては初めてご採用頂きました。

同社では、本格的な植物プラントを建設するにあたって約1年間テストプラントで食用野菜などを栽培されています。新鮮な野菜を洗わずにそのまま食べることを目指し、微生物に対する抗菌やその繁殖の温床となる藻の抑制のため、植物プラント内の床や壁などにケニファイン水系コートを塗布されています。

今後は、その有効性と使用条件を検証しながら、使用範囲の拡大を進めて頂く計画です。

高機能抗菌めっき技術『KENIFINE®(ケニファイン)』について

・ケニファインとは、(株)神戸製鋼所が独自開発した高機能ニッケル系合金めっき技術で、同社が得意とする各種合金開発技術の一つです。同社はライセンスビジネス(めっき業者もしくは自社にめっきラインを有するメーカーに技術を供与)を実施しています。

・従来の抗菌技術(抗菌塗装、抗菌ステンレスなど)に対して10倍以上の滅菌スピードとその後の菌の増殖を抑制する効果があります。かびの生育を抑制する作用は、銀系抗菌剤の50倍以上です。抗ウイルス(SARS系コロナウイルス、A型インフルエンザウイルスなど)や防藻、サケマス魚卵のミズカビ抑制などの効果も認められています。

・1996年7月、大阪府堺市で発生した病原性大腸菌O157による大規模集団食中毒事件を機に、その対策技術として、同社技術開発本部の中の材料研究所と(当時の)生物研究所と共同で開発をスタートさせたのがきっかけです。

・開発が完了した2001年に最初の技術供与先が決まり、2002年より量産を開始しました。その後、めっき技術の改良(耐変色処理や粉末化技術の開発、樹脂への適用化など)を行ない、現在10社にライセンス供与しています。

・すでに、食品・飲食産業や医療関係、家電・エアコン部品、漁業用金網などの産業分野や、台所用品、グルーミンググッズなどの一般消費財、さらにはアミューズメント分野などの民生用途で採用されています。


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