受刑者向け農業自立支援・園芸治療プログラムが全国で展開中

 国内では法務省を中心に「自立更生促進センター構想」がある。保護観察所に宿泊施設を整備して、主に刑務所を仮釈放になった人を一定期間受け入れ、そこに宿泊させながら、専門家である保護観察官の指導・管理下のもとで、確実な更生と円滑な社会復帰につなげていこうという計画である。

2008年10月、法務省が国営初の少年向け更生保護施設として開設した沼田町就業支援センターでは、園芸治療と職能を身につけさせるために、農業実習による自立支援を行っている。

センターによる実習支援を経て、既に大規模農家や近隣の食品加工会社に就職した少年達もいる。

センターがある田沼町は、人口4,000人弱で、人口減・農業後継者不足に悩む沼田町が協力する形で、こうした自立支援プログラムが実現した、という。

支援センターでは、保護観察官らが常駐し、少年たちはそこから毎朝、郊外の町営農場に通う。野菜やシイタケ栽培、肉牛飼育などが中心で、農場にとっては貴重な働き手でもある。

門限や携帯電話禁止などの制限はあるが、自由時間の外出などは可能。実習手当を蓄えて自動車免許の教習所に通う者もいる。


 当然の反応だが、当初は住民にも不安があったという。そこは、継続的な粘り強い町民説明会により理解を住民が深め、今では町内の行事などにも参加し、地域住民との交流もあるようだ。

北海道にある沼田町就業支援センターでは、少年院のみに対する支援だが、現在では、刑務所を出所する成人を対象とした支援プログラムもあり、北九州市や茨城県ひたちなか市にもセンターが整備されている。

こうした農業自立支援プログラム(園芸プログラム)では、心身ともに健康体を獲得でき、再犯率の減少にもつなげることができる。

例えば海外(米国など)では、政府や自治体だけでなく、NPOが支援しながら、受刑者向け・高齢者向けの園芸(治療)プログラムを充実させ、栽培した農作物を病院食やレストランなどに販売して利益を得ながら、一部をフードバンクやその他のコミュニティを通じてホームレスに食事を寄付するような社会貢献事業が実現している事例もある。

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