サカタのタネは、日本甜菜製糖株式会社製造の有機の液肥『サカタ液肥GB』を、2011年12月1日から生産者向けに販売する。本製品は、グリシンベタインを多く含む副産植物質肥料である。グリシンベタインは、マングローブや海藻、ムギ、テンサイなどに含まれる天然物質で、細胞内の浸透圧を調節し、ナトリウム障害を緩和する効果がある。そのため、潮害や連作などによる塩類集積(高EC)条件下で『サカタ液肥GB』を施すと、生育促進の向上が期待できる、という。以下、同社プレスリリースを掲載しておく。
塩類集積(高EC※1)、高温、低温、乾燥などの生育不良環境下において植物の成長を改善する画期的資材
有機の液肥『サカタ液肥GB』を発売/植物由来のグリシンベタイン※2、アミノ酸類、ラフィノース※3を含有サカタのタネは、日本甜菜製糖株式会社・製造の有機の液肥『サカタ液肥GB』を、2011年12月1日から生産者向けに販売します。本製品は、グリシンベタインを多く含む副産植物質肥料※4です。グリシンベタインは、マングローブや海藻、ムギ、テンサイなどに含まれる天然物質で、細胞内の浸透圧※5を調節し、ナトリウム障害を緩和する効果があります。
そのため、潮害や連作などによる塩類集積(高EC)条件下で『サカタ液肥GB』を施すと、生育促進の向上が期待できます。あわせて13種類以上のアミノ酸類、天然オリゴ糖のラフィノースを含んでいることで、高温、低温、乾燥環境下でのストレス緩和や生育促進、品質向上に効果を発揮します。『サカタ液肥GB』は、1本10?入り15,750円(税込み希望小売価格)で、全国の種苗店、農業用資材販売店、JAを通じて販売します。売上目標金額は、初年度が3,000万円、3年後は年間1億5,000万円です。
潮害や台風の暴風時の波しぶきなどで海水が土壌中に浸入すると、土壌の団粒構造が損なわれ透水性が著しく低下し、作物は根腐れなどを起こします。また施設栽培では、栽培過程で灌水や施肥を続けることにより、水や土壌に含まれる肥料分や塩分が徐々に凝結し高ECとなり、地表付近に塩類が集積し大きな問題となっています。植物は、土壌中の塩分上昇などさまざまなストレスにさらされると、自らの成長を抑制し、葉の気孔を閉じて水分の蒸散を防ぎます。しかし、気孔が閉じてしまうと二酸化炭素を取り込めないため光合成能力が低下し、結果として農作物の品質が落ち、収量が減り、場合によっては枯死してしまいます。有機の液肥『サカタ液肥GB』は、グリシンベタインを多く含む植物由来の液体肥料です。グリシンベタインは、マングローブや海草、ムギ、テンサイなどに多く含まれる天然物質で、浸透圧調整物質として植物体内で働きます。グリシンベタインのように、細胞内の浸透圧を上げることでナトリウムイオンの悪影響を緩和する物質のことを「適合溶質」といいます。適合溶質は電気的に中性で水和性が高く、細胞内に蓄積しても毒性をもたないので、農業用肥料に向いています。適合溶質のなかでもグリシンベタインは、タンパク質や膜の構造を保護する効果があることから、上述のような塩類集積状況下でグリシンベタインを施すと、タンパク質や細胞膜を保護し、さまざまな環境ストレスから植物を守ることが期待できます。
またそれだけでなく、グリシンベタインは高温、低温、乾燥などによる各種ストレスも緩和する働きがあります。『サカタ液肥GB』は、このストレス緩和作用により植物の光合成能力を維持向上させることができることから、植物体自体の老化を抑制し、養水分の吸収に大きく貢献する細根の発達促進、微量要素欠乏症の緩和、しおれや葉枯れ防止機能を発揮し、その結果として農作物の増収、品質の向上、収穫後の鮮度保持向上などさまざまなメリットをもたらします。グリシンベタインを含む肥料はこれまでにもありましたが、『サカタ液肥GB』は従来品よりもはるかに濃度の高い約6%のグリシンベタインを含有しています。また、従来品は化学肥料を含んでいますが『サカタ液肥GB』は100%植物由来のため、ほかの高機能資材との混用もしやすい使い勝手のよい肥料です。
『サカタ液肥GB』には、グリシンベタインのほか、チロシン、アラニン、グルタミン酸、セリンなど13種類以上の豊富なアミノ酸類も含まれています。これらのアミノ酸をさまざまなストレスによって活力が低下した作物に施用することで、速やかな回復が期待でき、また健常な植物に対しても生育促進効果があります。さらに本製品には、天然オリゴ糖の一種であるラフィノース(raffinose)が含まれています。ラフィノースは、植物が低温ストレス環境下や種子の乾燥過程で生成するもので、植物体の耐寒性、耐乾性向上に大きく関与する物質です。熊本県八代市のトマトやパンジーの産地で『サカタ液肥GB』を使用していただいたところ、「栽培中、草勢は安定しており、葉色もよい」「追肥の量を減らして栽培することができた」「厳冬期でも収量が落ちなかった」「通常なら栽培途中で収穫不能になる塩類集積が著しい場所でも、他所と同様に収穫できた」などの高い評価をいただいています。
神戸大学農学部花卉野菜園芸学研究室においてトマトで比較試験を行ったところ、対照区は高温や乾燥が原因で葉枯れなどの症状を呈しましたが、『サカタ液肥GB』(週2回、全23回、1,000倍希釈)処理区は青々としており、耐暑性、耐乾性が向上したものと判断できました(図1)。また、トマトの苗に高EC区として4.5mS/cmを、対照区として1.5mS/cmを施しあわせてそれぞれに『サカタ液肥GB』(週2回、全23回、1,000倍希釈)を処理すると、いずれも根量が増加し、特に高EC下でそれが顕著となっていることがわかりました(図2)。
熊本県八代市内におけるパンジーでの試験(7月27日播種)では、『サカタ液肥GB』タネまき後21日目から15日間隔、全3回、1,000倍希釈)を処理した苗は無処理区よりも葉枚数が多く、葉が大きくなりました。さらに、タネまきから60日後の生存率を比較したところ、無処理区で90.9%、『サカタ液肥GB』処理区で95.9%という結果となりました(図3)。
本製品の基本的な使用方法は、原液を1,000倍に希釈し2〜4週間隔で土壌に散布します。花や野菜の栽培全般に使用でき、耐塩性の向上のほか、生産物の品質向上に大きく貢献します。なお本製品は高いpHのため、ほかの高機能剤と混用する場合には、植物に対する障害や肥料の沈殿、成分の変成を避けるため「ソイルマスター」などのクエン酸系肥料とあらかじめ中和してから使用してください。
当社では、花や野菜の種苗だけでなく、高機能資材の販売にも力を入れています。『サカタ液肥GB』を発売することで、ほかの高機能資材と合わせてそれぞれの地域に合った使用法を提案し、積極的に拡販していきます。※1 EC:
電気伝導度(electrical conductivity)の略。肥料や有機物(種々の有機酸や肥料成分)が含有されているとその含有量が多いほど電流の流れる量は多くなる。そのことを利用した、肥料濃度を表す単位。※2 グリシンベタイン:
マングローブや海藻、ムギ、テンサイに含まれるアミノ酸系物質。植物のナトリウム障害、高温、低温、乾燥などの環境ストレスを緩和する効果がある。※3 ラフィノース:
オリゴ糖の一種で植物が低温ストレス環境下や種子の乾燥過程で生成される。植物体における耐寒性、耐乾性向上に大きく関与する効果が明らかになっている。※4 副産植物質肥料:
食品工業または発酵工業によって副産されたもので、植物質の原料に由来する肥料をいう。※5 浸透圧:
水が半透膜を通って濃度の濃い溶液に移動する現象を浸透といい、半透膜の両側の濃度差によって生じる圧力差を浸透圧という。
<詳細は同社プレスリリースをご参照下さい>