発光ダイオード(LED)照明製造のHRD(鳥取市、原田宜明社長)は、低コストの植物工場用プラントを開発した。腐敗を防ぐため有用菌を加えた液肥と太陽光に近い波長のLED照明を組み合わせた設備で、高価な循環殺菌装置が不要になり、初期投資を大幅に抑制できるのが特徴。鳥取市の本社内にプラントを設置してレタスなどを生産。農業に参入し新たな事業の柱に育てるとともに、将来はプラント販売も視野に入れる。
「iDEAL(アイディアル)方式」と呼ぶ低コストプラントは、大阪府内のメーカーの協力を得て開発。細かい温度や湿度の管理が必要な育苗をインキュベーション(ふ化器)タイプの市販のミニ野菜栽培システムで行い、育成段階に入った苗を低コストプラントで促成栽培する。
新プラントは発泡スチロール製などの容器に、植物の成長を促進する有用菌を加えた液肥を入れ、LEDの光が苗に当たるよう棚に並べるだけで済む。日産10キログラム程度のプラントの場合、育苗用のシステムを含めても200万〜300万円程度に抑えられる。
これに対し、無農薬・無菌状態で栽培する従来方式の植物工場は雑菌による液肥の腐敗などを防ぐため、栽培スペースを気密化する設備や、液肥を循環させる配管、殺菌装置などが不可欠。このため、初期投資が1000万円単位に膨らむという。
原田社長は「iDEAL方式では、苗を入れる容器や棚はホームセンターなどで調達できる。雑菌の繁殖抑制に有用菌の力を借りるという逆転の発想で、日産10キログラム程度のプラントなら従来方式に比べて初期投資を5分の1程度に抑えられる」と説明する。
また、従来のプラントは植物の成長に必要な青と赤の波長だけを出すLED照明が使われることが多いが、iDEAL方式では太陽光に近い波長を出し、発熱量の少ない新開発の「お陽(ひ)さまLED」を採用。「緑色の波長があると病気に強くなるという最新の研究成果があり、安定した収穫量が期待できる」(原田社長)という。
野菜生産は障害者雇用を目的とした関連会社「HRD iDEAL」が担当。すでにHRDの本社2階の空きスペースを活用し、約200平方メートルのプラントで試験的にレタスの栽培を開始。今夏をめどに約500平方メートルに拡大し、初年度は1日当たり100キログラムを地元飲食店などに出荷する。5年後をめどに周辺地域にもプラントを増設し、年間5億円の売り上げを目指す。(参考:2012/3/8 日本経済新聞より)
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