【補足情報】実験的に栽培していた津田駒工業では、昨年8月から栽培実験を開始したが、今年9月には津田駒工業の敷地内に約75平方メートルの新たな実験プラントを完成させ、サンチュなど4品種の野菜の栽培を始めたようだ。現在は3人の担当者が1日20株を生産しており、2012年9月以降は月産6千株を目指している。今後は、繊維機械生産の技術や納期管理のノウハウを植物工場に生かし、安定した栽培技術を確保し、一定量の供給体制を築く方針で、植物工場の生産プラントの販売も計画している、という。
繊維機械分野などを主力事業とする津田駒工業は、09年8月に約1500万円を投じ、本社の野町工場(金沢市)の遊休施設を一部改良して植物工場を設置。完全子会社で保険代理業を手掛けるツダコマ・ゼネラル・サービスで栽培の実験を開始した。
LED照明の波長・照射方法と野菜の成長に関する栽培実験を行いながら、2012年9月をめどに月6000株を生産・販売する計画であるが、まずは実験システムで生産した「わさび菜、サンチュ」など5種類の葉野菜;600株(月)を販売しながら、市場調査・販路拡大を実施する。
報道によると、販売開始の初年度は赤字になる見通しだが、早期に黒字化できれば、植物工場のシステムを外販する方針のようだが、同じように照明や空調、養液メーカーといった植物工場に直接関係する技術系企業とは異なる分野(例:建設業や製造業)からの過去の参入事例から判断する限り、黒字化(ここでは営業利益を想定)を達成できた企業はゼロに近い。今回のケースでは、最終的には月6000株、つまり日産でいうと「200株」ほどの植物工場であり、小型の栽培システムに分類される。
最近の傾向でもある飲食・小売店向けの店舗併設型の植物工場用であれば、将来的にも可能性があるかもしれないが(それでも、既にライバル企業は多い)、野菜の生産・販売のみの事業モデルで考えた場合、あまりにも規模が小さく、生産コストが高くなることが予想される<あくまで当法人の見解であるが、最低でも日産1000株程度は必要だと考えている>。
ただし、実験的な栽培システムの整備に約1500万円を投じているが、もう少し初期投資を下げることができ、品質も高い野菜を生産・販売できるようになれば、販路の拡大には、それほど苦労しないレベルである。同規模設備(日産:200株程度)を持つ、その他の参入企業のケースを見る限り、大規模生産モデルのように販売先の開拓に苦戦することはない。この程度の生産量であれば外食・小売といった販路・ネットワークを持たない業種であっても、地場のスーパー・直売所「流通コストを抑えた地産地消モデル」、ネット販売等で充分にさばける量である。
計画通りに黒字化を達成することは非常にハードルの高いチャレンジかもしれないが、それでも他社にない技術や事業モデル、その他のプロモーション方法を実現・確立することを期待したい。同社の植物工場事業について、今後とも継続的に追いかけていきたい。
津田駒工業の売上高:126億5200万円(09年12月?10年5月期の連結決算)/最終損益は10億4600万円の赤字。10年11月期の売上高は325億円(前期は133億円)を見込む。