政府は、地球温暖化への対策として国家戦略「適応計画」案を初めてまとめた。環境省では、20世紀末と比較して今世紀末の日本の気温は平均で1.1度、最悪のケースでは平均4.4度も上昇する、という予測を行っている。
こうした地球温暖化対策として、環境省や農林水産省など11の関係省庁が、「農業・林業・水産業」「水環境・水資源」「自然生態系」「自然災害」「健康」「産業・経済活動」「国民生活・都市生活」の7分野で被害の軽減策を提案している。
適応計画(案)における農業分野では、高温に耐性のある品種開発、標高が高く比較的涼しいエリアでの果樹栽培、ロボットやIT技術を導入し、農作業の自動化や作業負担の軽減などが含まれている。気温上昇によるコメやリンゴ、ミカンなどの品質の低下が著しいため、高い温度に耐える新品種の開発が急務とされている。
既に稲作やワイン用のブドウ栽培などでは主力生産地の北上が始まっている。品種改良の他、植物工場をはじめとする環境制御や新たな冷却システムによる高度な農業を導入することで気温変動への対策につなげる取組みも行われている。
園芸作物について、現在の状況としては、露地野菜ではキャベツ等の葉菜類、ダイコン等の根菜類、スイカ等の果菜類等の収穫期が早まる傾向にあるほか、生育障害の発生頻度の増加も見られる。
施設野菜では、夏季の高温によるトマトの着果不良、裂果、着色不良等、生育期間の高温によるイチゴの花芽分化の遅延が見受けられ、こうした対策アイデアや新技術が必要となるだろう。
その他、高温回避のための遮光による光合成の低下、高温によるマルハナバチ等の受粉活動低下、大雪等による施設の倒壊等の影響も考慮する必要がある。
温暖化だけでなく豪雪や夏場のゲリラ豪雨など、自然災害による農作物の被害対策や住宅地におけるインフラ整備も進めていく。都市ではヒートアイランド現象の対策として、街路樹や屋上緑化、風通しの良い都市計画やデザインなども提案されている。
世界にて徐々に建設事例が進む環境志向型アグリビルディング(BIA:building integrated agriculture)といったテーマにも今後、大きな注目が集まっていくだろう。
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