IT技術と研究開発により産地とともに持続可能な農業をつくる株式会社AGRI SMILEは、独自のバイオスティミュラント資材評価系を用いて、食品産業における未利用資源を活用したバイオスティミュラント資材の研究開発及び評価事業を推進しています。
今年度より、三井物産アグロビジネス株式会社と共同研究契約を締結し、三井物産アグロビジネスが販売を進めるバイオスティミュラント資材に関して、作用機序の解明に向けた研究を開始しました。
AGRI SMILEの評価系を用いて作用機序を明らかにし、農業現場への導入をスムーズにすることで、日本市場におけるバイオスティミュラント資材普及への貢献が期待されます。
<背景>
地球温暖化を始めとする気候変動により、植物に対する非生物的ストレスが増加し、収量や品質への影響が懸念されています(※1-4)。
更に脱炭素や環境保護の観点から、欧米諸国を初め、日本においても、2050年までに化学農薬や化学肥料の使用量を削減する目標が掲げられています(※5-6)。
しかし、現行の方法から化学農薬や化学肥料に頼らない農法にシフトすると、収量や品質の確保が難しく、持続的な食糧供給を果たすために技術的な解決策が求められています(※5-6)。
化学農薬や化学肥料の使用量削減と、気候変動による植物へのストレス耐性付与を同時に果たす方法の一つとして、近年、バイオスティミュラント資材という新たな農業資材カテゴリーに注目が集まっています(※5, 7, 8)。
バイオスティミュラント資材は植物の免疫系を活性化し、根張り・収量の向上や、乾燥/過湿耐性、耐病性、耐高/低温性、耐塩性といった効果を付与する資材であり、その原料は微生物や多糖類、ペプチド、有機酸、ミネラル、腐植酸など多岐に渡ります(※7-8)。
付与したい性質に沿って、バイオスティミュラント資材を適切なタイミング・量で供する技術が確立されれば、化学肥料や農薬の使用量を削減しつつ供給責任を果たす農業の実現に貢献すると期待されます(※7-8)。
<共同研究の目的>
バイオスティミュラント資材に関して世界的に大きな期待が集まっていますが、一方で作用機序に関しては知見が少なく、農業現場での実証試験の結果を基にその効果や応用性を評価することが中心です(※7-8)。
従って新規資材の導入を目的とした試験では、使用技術の確立に時間がかかることに加え、効果はあるものの作用機序が不明瞭な資材という農業現場での不安を取り除くことができず、スムーズな現場導入が進まない課題があります。
そこでAGRI SMILEは新たに研究室を設立するとともに、バイオスティミュラント資材の独自の評価系によって、資材検証及び新規資材の研究開発を開始しました。
本評価系では、イネの幼苗を用いた研究室スケールの短期試験において、資材添加によるバイオマス量への効果を検証することに加え、網羅的な遺伝子発現解析・植物ホルモン解析といったミクロな観点からメカニズム解明を試みます。
更に、研究室スケールでの評価から圃場スケールへの評価も合わせて、スムーズな現場導入に向けた技術知見を獲得します。三井物産アグロビジネスは、国際的なバイオスティミュラント資材のネットワークを活用し、フルボ酸、アミノ酸等を有効成分とした新規バイオスティミュラント資材の探索と日本市場への導入を進めています。
双方の強みを活かし、ハイスループットに資材のエビデンス情報を獲得し、日本市場でのバイオスティミュラント資材の普及へと繋げることを目的として共同研究を開始いたします。
まず第一弾として、国外の食品産業における副産物を活用したバイオスティミュラント資材に着目し、三井物産アグロビジネスが資材調達を担い、AGRI SMILEが評価系による資材検証を進めます。
■参考資料(※)
1. Bigot S. et al. Pivotal roles of environmental sensing and signaling mechanisms in plant responses to climate change. Glob. Chang. Biol. 2018; 24: 5573-5589
2. Anderson J.T. Song B. Plant adaptation to climate change – where are we?. J. Syst. Evol. 2020; 58: 533-545
3. Bailey-Serres J. et al. Genetic strategies for improving crop yields. Nature. 2019; 575: 109-118
4. Cline W.R. Global Warming and Agriculture: Impact Estimates by Country. Peterson Institute for International Economics, 2007
5. 農林水産省 みどりの食料システム戦略, 2021
6. European Union Farm to Fork strategy, 2020
7. Rouphael Youssef, Colla Giuseppe Editorial: Biostimulants in Agriculture, Frontiers in Plant Science 2020; 11: 40
8. Yakhin OI, Lubyanov AA, Yakhin IA, Brown PH. Biostimulants in Plant Science: A Global Perspective. Front Plant Sci. 2017 Jan 26;7:2049.
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