中東における水不足は深刻である。例えばサウジアラビアは、人口増加や工業化により水の需要が急増しており、1日の一人当たりの飲料水消費量は2008年には286リットルとなり、世界で最も多い水消費国の1つになっている。
同国ではこうした水需要の高まりから、30を超える国営の海水・淡水化プラントが操業しており、プラントによる水の生産量も世界最大であり、2009年には17億立方メートルとなっている。
サウジアラビアの飲料水の半分は、こうした淡水化を行った水であり、40%が地下水、9%が地表水、1%が排水の浄化処理水によるものである、という。
水不足は中東諸国だけでなく、アジアでも同様である。シンガポールでは、水不足解消のために飲用水の生産事業が盛んであり、水の100%自給を目指している政府は6月末、2060年までに、海水・淡水化による水の生産量を10倍に増やす計画を発表した。
シンガポールでは、国内にて技術・運営ノウハウを獲得した企業が、海外に進出する事例も増えている。
シンガポールのセムコープ・インダストリーズ社は、アラブ首長国連邦UAEのフジャイラで海水・淡水化施設を2億米ドルで開発する計画を発表しており、子会社のセムコープ・ユーティリティーズ社が2013年末までに建設することで、アブダビ水道電気庁と合意している。
規模的には、逆浸透膜によるろ過で1日13万6,400立方メートルの飲用水を生産。政府系水道会社に20年間販売予定である。
同社はアブダビ政府系企業と合弁で、フジャイラですでに世界最大の淡水化施設を運営しており、今回のプラントも合弁事業となる見通しである。さらには、オマーンでも2012年前半開業を目指し、10億米ドルの発電所と海水淡水化施設を建設中である。
水市場は15年後には現在の2倍以上の87兆円に拡大すると見込まれており、世界中から様々な企業が研究開発・参入を計画している。水の浄化技術(例:膜処理やポンプ技術)など、各技術力は非常に高い日本では、プラントの建設や個別技術の採用に留まっており、veolia社やsuez社といった巨大水メジャーのような大規模受注(水道事業全体)を獲得することができていないのが現状である。
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