農研機構・東北農業研究センターとJA全農は、低段密植・養液栽培用の初のトマト品種「すずこま」を育成し、近々、果実の試験販売も開始することを発表した。今回育成した「すずこま」は、草姿がコンパクトで密植に適し、30〜40gの小さめの果実を多数収穫することが可能である。
また、「すずこま」の果実は、抗酸化作用を持つ色素リコペンを多く含み、みずみずしい濃赤色で糖度は低めの「加熱調理に適するクッキングトマト」である。新しい品種が開発されたことにより、世界平均の半分しかない日本のトマト消費量を増やす役割が期待されている。以下、要約のみ掲載。詳細は東北農業研究センターのサイトをご参照下さい。
■ 「すずこま」育成の背景・経緯
【多段栽培と低段密植・養液栽培】
日本において生果実で流通させるトマトは、ほぼすべてが多段栽培。低段密植・養液栽培は、1970年代から日本で独自に開発されてきたトマトの栽培技術であり、苗を通常の2〜4倍(最大1000株/a 程度)の密度で定植して高設ベンチで栽培し、低段の花房(1〜3段)の果実のみを収穫した後に新たな苗に植え替え、これを年に3〜4作繰り返す。
この方法によって、作業の単純化、高品質化、低コスト化などの実現が可能で、一部で実用化されているほか、植物工場への導入も検討されている。
【生食用トマトとクッキングトマト】
日本の一人当たり年間トマト消費量は、世界平均のほぼ半分の9kg程度(FAO統計、2007)。消費量の多い諸外国において、トマトは多くが加熱調理されるのに対して、日本ではほとんどが生で食されており、これが消費量の少ない一因。
近年トマトを加熱調理する機会が増えているが、ホールトマト缶の輸入が増え続けている。これは消費者やプロの調理人は、日本の生食用大玉トマトを加熱調理した時の品質に満足していないことの表れである。
■ 「すずこま」の特性
草姿がコンパクトで密植に適し、花数が多いために30〜40gの小さめの果実を多数収穫することが可能。茎の伸長が停止する心止まり性であるため、手間のかかる芽かき作業が不要である。
果実の柄の部分に節がないジョイントレス性を持つため、収穫時にヘタが樹側に残り、ハサミを使わない省力的なヘタなし収穫が可能である。生産者や流通販売業者の間ではトマトにヘタは必須だといわれているが、消費者はヘタの有無をそれほど気にしておらず、省力栽培と低価格販売を実現するためには、今後「すずこま」のようなジョイントレスによるヘタなし出荷が重要になると考え、新たな品種を開発した。
※ 詳細は東北農業研究センターのサイトをご参照下さい。