佐賀県の8つの離島に自生する植物や、栽培した植物を活用し、コスメ原料化、加工品製造、量産化、産業化を目的としたNPO法人リトコスが2020年8月31日から活動を開始した。同法人は唐津市の地産原料開発委託業務を行う(一社)ジャパン・コスメティックセンターから生まれた、新プロジェクトに近い形となる。
それぞれの島の耕作放棄地を自然農法で育てたハーブなどの植物で再びコスメへと再生(Re:to cosme)させ、更にはそれぞれの島の活気を取り戻したいという意味を込めてNPO法人「リトコス」と名付けました(2020.8.31現在8つのうち5つの島をJAS申請完了)。
■活動の経緯
佐賀県には、加唐島、加部島、小川島、松島、高島、神集島、馬渡島、向島、といった隣接する8つの島があります。
唐津市の地産原料開発委託業務の一環で(一社)ジャパン・コスメティックセンター(JCC)のコーディネーターとして島へ訪れるたびに、離島の課題に直面し、コスメで解決できないかと考えました。
近年、島々の畑ではイノシシの被害が多く、耕作放棄地が増えていることが地域課題となっています。漁業を生業とする人がほとんどで、農業従事者がいなかったことが一つの原因でした。
オーガニック自然化粧品を通じ、社会貢献を願うリトコスは、耕作放棄地を開墾しオーガニックによるハーブ栽培及びそれらを使った加工品の製造が広がれば、8つの島の自然環境の改善と人口流出防止につながると考えています。
現在、島民のみなさんと一緒に、農薬や化学肥料を一切使わない自然農法で、化粧品の原料を生産しています。島民のみなさんが安心して畑を耕し、出荷できる体制も整えることは、やがて子どもたちが安心して島で暮らせることへとつながると信じています。
リトコスの使命は、島の豊かな地球環境保全と、島の生産者を支援すること。そして、離島で暮らす子どもたちの未来を応援することです。自然とのバランスのとれた関わりの中に、わたしたちは持続可能な経済活動を実現し、人々が自然と共生しながら豊かに暮らせる未来を目指しています。
■取り組みの例 その1- 加唐島
元々、漁業が主な産業だった加唐島。佐賀県の最北端に位置するこの島には100名程度の人々が暮らし、島には4万5千本の椿の木が、昔から壮大な自然の中で自生しています。私たちは、その良質な椿油を生かし、新しい産業として産地化を目指しています。
島民により収穫された椿の種を、島つばき工房のメンバーがコールドプレスにて搾油後、3回ろ過することで、黄金色をしたピュアな椿油が生まれます。現在までにも加唐島で生まれた椿油は様々なコスメブランドで製品化され、島の自生種のみのヤブ椿100%から生まれた椿油ならではの品質の良さに大変ご好評を頂いております。
■取り組みの例 その2- 加部島
佐賀県唐津市呼子の特産品である甘夏みかんは、なつみかんに比べ糖度が高く、酸が抜けるのも早いため、早く出荷できるのが特徴です。市場には4月から5月頃にかけて出回ります。飽きのこない風味とまろやかな甘さ、適度な酸味から、甘夏ゼリーなどの加工品としても親しまれています。
私たちは、呼子の特産品『甘夏かあちゃん』より見かけが悪く捨てられていた甘夏の皮を頂き、水蒸気蒸留法により、蒸留水と精油を抽出、化粧品原料を生産することに成功しました。また福祉関連施設との協働を目指し、唐津特別支援学校の生徒さんたちとの商品開発や、就労施設との連携により障害者の就労支援を行っています。
■取り組みの例 その3- 高島
唐津城から約2kmのの沖合に浮かぶ高島は、宝くじが当たると言われている島で人口200人ほどの島です。人口はこの10年で半分ほどに減ってきています。原因のひとつは農業従事者がいないこと。イノシシの被害が多く、耕作放棄地が増えていること、仕事がなく若い世代が島を離れてしまうことが少子高齢化に繋がってきています。
私たちは、農業従事者がゼロの高島で島民に自然農法や日本ミツバチの養蜂を指導し、シニア層の生きがい、収入増へ繋げています。また、島でできた素材だけを使って島の子供たちと一緒にコスメつくり体験なども実施しており、コスメを使って子どもたちの教育に繋がればと考えています。高島では島のすべての耕作放棄地にJAS認証を取得し、将来的にはコスモス認証※ を取得し原料の付加価値化を目指しています。
※ COSMOS (COSMetic Organic Standard 有機化粧品基準)は、オーガニックとナチュラル化粧品の世界基準
■取り組みの例 その4- 向島
かつて豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に物見番所として重用されていた向島。標高67mに立つ灯台は、船舶の海標として多くの船を見守ってきました。灯台下の瀬は潮の流れが良く、絶好の磯釣り場として有名です。向島は人口50人程度の島ですが、地元では生産組合が立ち上がり、インドセンダン(ニーム)を育て、お茶に加工されていました。
原産地のインドでは奇跡の木として知られているニーム。古くから家庭に万能薬として常備され、人々の生活を支えてきました。近年は、虫を寄せ付けない効果があることがわかってきています。虫除けの効果が高く、動物や人間には無害なことから、小さなお子様にも安心して使える虫よけとして、また無農薬、自然農法でも畑に撒くことで、天然の虫よけ剤になるということでも需要が高まってきています。
■ビジネスの仕組み
Editor's Picks
-
田んぼに浮かぶホテルがコンセプト、スイデンテラスがリニューアルオープン
-
緑演舎による造園家がプロデュースする個人住宅向け「GARDENNERS HOUSE」事業をスタート
-
ミラノ都市部で自然に囲まれたオフィス空間を実現。ハイテク企業や研究者のハブ施設へリニューアル
-
シンガポールの高層住宅タワーをリニューアル。屋上には住民参加型の菜園も整備
-
メルボルンに駐車場スペースを活用した屋上農園「スカイファーム」が来年に完成
-
台湾の青果市場、屋上に農場を導入した最新施設として2020年に完成予定
-
ロンドン、屋上に植物工場ファームを併設した地元フードコート施設を開設
-
UAEの陸上養殖ベンチャー『Fish Farm社』サーモンなどの魚を本格販売へ
-
カナダの大学が連携。クリーン・エネルギー技術を活用した『高層タワー型の植物工場』を計画
-
海面上昇の対策、海洋に浮かぶ街「フローティング・シティ」食料やエネルギーの自給自足を実現