政府統計によると、オーストラリアにおける施設園芸や植物工場などの環境制御型農業の市場規模は現在、約1,400億円(2017年)と推計されている。
今後も市場規模の拡大が予想されており、最低限の環境制御を行う施設園芸から、今後は、より植物工場に近い形の栽培システムが普及していく、と考えられている。
植物工場(太陽光利用型・完全人工光型)では、温湿度や水分・養分、CO2濃度や光量など、あらゆる条件をベストな環境に調整することができるため、飛躍的な収量増、安定生産、品質向上や環境保全にもつながる。
特に、干ばつの影響が大きなオーストラリアの地域では、水を節約できる潅水や養液循環システムなどの技術は高いニーズがある。
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オーストラリア政府は、こうしたハイテク農業に対して、早い段階から戦略的支援を実施している。例えば、ウェスタンシドニー大学などと連携し、約3.3億円の補助支援を行い、最新の植物工場施設である「National Vegetable Protected Cropping Centre」を2017年に建設・稼働させている。
植物工場ビジネスの投資利益率(ROI)を25%にまで実現可能
現時点における施設園芸ビジネスでは、投資利益率(ROI)は平均して5~10%程度であるが、植物工場ビジネスになれば、25%にまで向上させることも可能である。
そのために政府では、栽培技術の確立、人材育成、ビジネスモデルや最新事例の研究を行っており、園芸分野に関する全国統計調査も毎年、実施されている。
ビジネスモデル研究では、約300社の農業生産法人について、栽培面積、生産額、投資額といった数値データを収集・分析を行っている。今年の園芸分野に関する調査も3月4日より開始し、年内9月頃には結果が発表される予定。
園芸作物における野菜だけの市場規模(国内産出額)は、2016-17年で約3,030億円となっているが、2022-23年には約9,340億円にまで膨らむ、と予想されている。
現時点では簡易的な施設園芸で栽培された野菜も多いが、将来的には、植物工場などハイテク農業による野菜の生産割合が高まっていくことが予想される。