合同会社TAKEOと、弘前⼤学・農学⽣命科学部 環境昆⾍学研究室 助教 管原亮平は、2020年8⽉17⽇、トノサマバッタの⾷料利⽤に関する共同研究を開始した。
弘前大学農学生命科学部の管原助教はトノサマバッタの⽣産技術開発、TAKEOはその実証試験およびトノサマバッタ⾷品の需要開発を担当します。
生産技術開発ではトノサマバッタ飼育に関する基礎データ収集、飼育条件の最適化、専用ドライフィード(乾燥飼料)の開発、食用品種の選抜育種などに取り組みます。
実証試験ではTAKEOの昆虫農業「むし畑」の屋外施設を用いて、商業生産技術の確立に取り組みます。併せて加工食品開発や広報活動などを通じてトノサマバッタ食品の需要開発、市場の拡大にも取り組みます。
なぜトノサマバッタなのか?
現在、世界の昆虫食市場における主流はコオロギです。
コオロギは雑食性で飼料の調達がしやすく、かつ生育も早いために養殖がしやすいこと、食用昆虫としての市場が既にある程度形成されていることから、養殖昆虫として特に人気があります。
裏を返すと、養殖のしやすさや市場規模の課題が克服できれば養殖昆虫の選択肢はコオロギ以外にも拡大する余地は十分にあると言えます。そこで私たちはトノサマバッタに注目しています。
今回の研究開発により、トノサマバッタの養殖のしやすさはコオロギと同程度に、養殖にかかる環境負荷はコオロギより低くできる可能性があると考えています。一般的なコオロギ養殖では、穀物や魚粉などを含む栄養価の高い濃厚飼料を与えており、それによって効率の良い生産体制を実現しています。
したがって、一般的なコオロギ養殖はその雑食性を活かした、栄養価の高い食料資源から栄養価の高い食料資源を生産する仕組みと言えます。
一方のトノサマバッタ養殖では、栄養価が低いイネ科植物の葉だけで生産が可能です。当該のイネ科植物には栽培した牧草や、自然界に大量に存在する多様な種を利用することができます。また、トノサマバッタはコオロギと同程度のタンパク質を含む栄養価の高い食用昆虫です。さらにはコオロギと同様に、ウシやブタよりも温室効果ガスを出しにくいことが既に報告されています。
したがって、トノサマバッタ養殖はその植食性を活かした、栄養価の低い”非”食料資源から栄養の高い食料資源を生産する仕組みであり、より環境にやさしい食料生産の一つであると言えます。
トノサマバッタの飼料に関して現状は生葉の使用が基本ですが、今後の研究開発によって乾燥飼料が使用できる可能性があります。それにより養殖にかかる労力が大幅に削減することが期待されます。
トノサマバッタは牧草の爽やかな香りと強いうまみが特徴の、非常に食味にも優れた昆虫です。例えば素揚げにすると川エビに似たサクサクとした食感となり、おつまみ感覚で楽しむことができます。あるいは牧草の爽やかな香りを活かして、キャラメルやクッキーなどのスイーツにも応用することができます。
コオロギが優れた食用昆虫である点に疑いの余地はありません。しかし食用昆虫養殖の歴史は浅く、コオロギだけが最善の食材であるとは限りません。トノサマバッタという別の選択肢を提示することで、昆虫食の可能性はさらに拡大していくと私たちは考えています。
共同研究の経緯
トノサマバッタの商業的大量生産は課題が多いテーマです。世界各地で大量生産への取り組みが始まっていますが、実験室レベルを超えた成功事例は多く見られません。TAKEOでは2019年より昆虫農業「むし畑」として日本で初めてのトノサマバッタの商業生産にチャレンジしています。
現状はテスト飼育を終え、技術的課題が明確化されつつある段階です。専門家の知見を活用することで商業生産に向けた技術開発を加速し、2021年のトノサマバッタ食品の流通を目指しています。
TAKEOの技術顧問で昆虫食専門家として活動する佐伯真二郎氏の仲介により、弘前大学の管原助教がバッタの専門家として参画することになりました。
管原助教はバッタ研究のトップランナーの一人であり、トノサマバッタを研究対象とした多くの研究実績があります。管原助教はトノサマバッタの生理や生態に詳しいだけでなく、実験室にて長年に渡ってトノサマバッタを飼育しており、養殖に関するノウハウを豊富に有しています。またトノサマバッタの様々な系統を維持しています。
■合同会社TAKEOについて
法人名:合同会社TAKEO
所在地:東京都台東区松が谷1-6-10
企業サイト:https://takeo.tokyo/
昆虫食の専門企業。野菜、魚、肉などと同じように昆虫が台所を彩る、より豊かな食卓の実現を目指す。
昆虫農業「むし畑」による昆虫養殖から、国産昆虫シリーズやタガメサイダーをはじめとするオリジナル商品の開発・製造、オンラインショップ、昆虫食専門の飲食店兼直販ショップまで昆虫食に関わる幅広い事業を展開している。
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