バイエル社(バイエル・クロップ・サイエンス社)は、新技術の実証ショールームとして大型の太陽光利用型植物工場を米国カリフォルニア州の西サクラメント市に建設した。
総事業費は1200万ドルで、敷地面積は約2ヘクタール。トマトやメロン、キュウリなどの園芸作物について、環境制御を通じた最適環境の検証や新たな種苗開発を行っていく。
同社はドイツを拠点する医薬・化学・農業関連ビジネスを展開する多国籍企業である。バイエル・クロップ・サイエンス社の米国本社は、ノースカロライナ州のダーラムに置かれているが、生物製剤の研究開発拠点は西サクラメント市となっている。
周辺にはカリフォルニア大学デービス校を始め、農業やバイオ関連の大学や企業が集中としており、同社でも周辺の大学との共同研究や人的交流を通じて「農業版シリコンバレー」を目指している。
今回、新たに建設された植物工場は大きく2つの温室ハウスに分かれており、園芸作物の種苗開発チームが約1,300平方メートルの温室ハウスを利用し、もう一つの約1,000平方メートルのハウスを生物製剤などの研究開発チームが利用する。
生物製剤の研究チームは、化学農薬ではなく、生物農薬や生物由来の化合物を利用しながら植物に関する病害虫のコントロール(IPM,総合的病害虫管理)などの研究を行っている。
今回の植物工場では、野菜の機能性向上(栄養化や香り、食味など)や長期的な鮮度維持が可能な品種などの研究に加えて、併設施設として約370平方メートルの人工光型植物工場も導入しており、環境制御による収量比較・病害虫に関する耐性に関する研究を行う、という。
人工光型植物工場では、それぞれの空間で温湿度や光を制御することで、莫大なデータを効率よく収集・分析することができる。
同社は2014年、生物製剤・種苗開発に関する統合的な研究開発センターを8,000万ドルをかけてカリフォルニア州・西サクラメントにオープンさせている。現在は190名の研究者が活動しているが、最大で300名を雇用することが可能な研究センターである。
約4ヘクタールの敷地を持つセンターには、1.6ヘクタールの研究開発施設を整備し、オフィスやラボ、約185平方メートルの温室ハウスなどが稼働している中、今回は新たに人工光型も一部含む、大型の植物工場を2月24日に建設・稼働させた。
同社は2013年~2016年の間に、米国だけで10億ドル、グローバルには33億ドルの投資を行う計画があり、今回の植物工場の建設も、その研究開発向け投資の一環となっている。
※ 写真: サクラメント市のウェブサイトより
Editor's Picks
-
田んぼに浮かぶホテルがコンセプト、スイデンテラスがリニューアルオープン
-
緑演舎による造園家がプロデュースする個人住宅向け「GARDENNERS HOUSE」事業をスタート
-
ミラノ都市部で自然に囲まれたオフィス空間を実現。ハイテク企業や研究者のハブ施設へリニューアル
-
シンガポールの高層住宅タワーをリニューアル。屋上には住民参加型の菜園も整備
-
メルボルンに駐車場スペースを活用した屋上農園「スカイファーム」が来年に完成
-
台湾の青果市場、屋上に農場を導入した最新施設として2020年に完成予定
-
ロンドン、屋上に植物工場ファームを併設した地元フードコート施設を開設
-
UAEの陸上養殖ベンチャー『Fish Farm社』サーモンなどの魚を本格販売へ
-
カナダの大学が連携。クリーン・エネルギー技術を活用した『高層タワー型の植物工場』を計画
-
海面上昇の対策、海洋に浮かぶ街「フローティング・シティ」食料やエネルギーの自給自足を実現