Journal of Agriculture and Food Chemistryに掲載された記事によると、フィンランドのクオピオ大学の研究者が、人間の尿が植物、特にキャベツの栽培のための有機肥料として効果がある、という研究レポートを公表している。
実験では、近隣の家を一人一人まわり、実験のためのオシッコを集め、新鮮なオシッコを与えたレタスと、通常の肥料を与えたキャベツとの比較実験を実施した。尿を肥料として使用する際には、殺菌され、植物が吸収可能な形に精製した。
比較実験では、飛躍的な結果が得られたわけではないが、それでも、通常の肥料で栽培したキャベツよりも成長速度が早く、バイオマスの利用としても最適である、という結果を得ている。
また、味に関しても、研究者が、サワークラウト(酸っぱいキャベツの漬物)にしたキャベツを食したが大差がなかった、という。
そもそも、人間や動物の糞尿は、無料の肥料として昔から利用されているものであり、最近ではこうした論文・実験データがいくつか公表されている。こうした科学的データに裏打ちされた効果があれば、途上国でも有効的に活用できる可能性がある。
例えば、バイオトイレ(コンポストトイレ)によって糞尿を分解した土壌を作るだけでなく、食品廃棄物と同時に微生物に分解させ、得られる排熱・CO2・メタンガスを利用することで、発電エネルギーや栽培室内の暖房にも再利用できる。また、CO2は植物育成にとって必須な元素である。
単なる伝統的な”肥溜め”農業ではなく、最先端技術を融合させることで、途上国でもサステイナブルな形で、生産性の高いハイテク農業も将来的には可能かもしれない。
※ 研究データ論文: Use of human urine fertilizer in cultivation of cabbage (Brassica oleracea) ― impacts on chemical, microbial, and flavor quality.
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