シンガポールのビル屋上、タワー型水耕栽培にて野菜を生産「シティーポニクス社」

 近年、シンガポールでは都市住民が共同で運営するようなコミュニティー・ガーデンが人気となっている。以前ではシンガポールでも車で30分~1時間近く行かなければ野菜の生産農場は無かったが、最近では露地、植物工場、水耕栽培・アクアポニクスなど、様々な生産方式にて運営する屋上菜園も増え、都市住民にも普及しつつある。

シンガポールのビル屋上、タワー型水耕栽培にて野菜を生産「シティーポニクス社」

2万人以上がコミュニティー・ガーデンに参加
大学での研究、会社による屋上菜園の設置など事例も多数あり

 シンガポールは緑の多い国として知られているが、これは政府による計画的な施策によって普及している。
例えば、シンガポール国立公園局によって2005年から推進されたガーデニングの普及プログラム「ブルーム・プログラム」によって、今日までに約1000カ所以上のコミュニティー・ガーデンが設置され、2万人以上の住民が参加している。

その他、会社が屋上菜園を設置する事例も増えており、野菜の栽培だけでなく、テントや家具が置かれ、働いているオフィスワーカーが自由にリラックスできる空間づくりを行っている。

会社内にガーデニング・クラブが存在し、金曜日には1時間程度、みんなで屋上菜園の管理や収穫作業を行い、週末には家族も連れて会社でパーティーを行うこともある、という。

 こうした屋上などの未活用スペースにて野菜が栽培でき、週1回の管理にて誰でも簡単に農場が維持できるようになったのも、水耕栽培などの設備開発が進んできたからだ。

有名なシンガポール国立大学でも、人工光型植物工場から、独自なデザインを持つ水耕栽培やアクアポニクス設備など、様々な生産方式の設備開発や栽培実験が各研究室にて行われている。
こうした研究テーマは農学部ではなく、環境制御や自動化という点では、機械工学などを学ぶ学部が多く研究されているようだ。

・シンガポール国立公園局によるBloom Initiatives
https://www.nparks.gov.sg/gardening/community-in-bloom-initiative

・シンガポール国立大学・機械工学
http://me.nus.edu.sg/

都会ビルの屋上スペースを活用「シティーポニクス社」
タワー型の水耕栽培システムにて野菜を生産

シンガポールのビル屋上、タワー型水耕栽培にて野菜を生産「シティーポニクス社」 シンガポールの「シティーポニクス社」は、高層タワーが立ちならぶ都会の真ん中にある屋上の駐車スペースに、垂直タイプのタワー型水耕栽培システム164台を設置し、主に葉野菜の生産を行っているベンチャー企業である。

1台の水耕キットの高さは1.8メートル。7本の養液パイプがジグザグ状に配置され、1台ずつが独立しているわけではなく、隣の水耕キットと連結されている。

つまり、各水耕キットの最下部に小さな養液タンクがあり、ポンプで隣の最上部へ養液を送り、あとは養液がジグザグ状に配置された配管を流れて循環する仕組みとなっている。

シンガポールのビル屋上、タワー型水耕栽培にて野菜を生産「シティーポニクス社」シンガポールのビル屋上、タワー型水耕栽培にて野菜を生産「シティーポニクス社」
現在は約25種類の野菜やハーブを生産しており、バターヘッド・レタスやホウレンソウ、ディル、バジルや水菜など葉野菜が中心である。そして本施設は、周辺住民のコミュニティーセンターによるボランティアが中心となって収穫され、都市住民へ野菜が届けられている。


 同社の設立者であるテオ氏は、農薬分野など農業に関わる仕事に携わっていたが、決して生産者としての経験はない。2001年にはマレーシアにて3haの農地にて野菜の土耕栽培に挑戦したが、生産がうまくいかず2年後には撤退。
そして今から7年前に再度、完全無農薬の農業に挑戦すべく、タワー型の水耕キットの試作モデルを考えた、という。

一つの水耕キットの設置コストは4,800ドル程度。20年近くは維持できるように設計されている。シンガポールにて、太陽光がしっかり確保できる場所では、1つのキットにて葉野菜なら5~10kgは収穫することができる。
同社では次のプロジェクトとして、農薬を一切使用しないエサで育てた養鶏や魚の養殖を視野にいれている、という。