北海道大学とソニーグループ、スマート農業や海洋分野にて共同研究

北海道大学とソニーグループ株式会社は、北海道大学内に「ソーシャル・イノベーション部門 for プラネタリーバウンダリー」を開設した。北海道大学の学術的知見とソニーグループの先端技術を生かし、農業・森林・海洋分野における社会や地球環境の課題解決に貢献する技術及びソリューションの開発に取り組む。

今後は、北海道大学構内のフード&メディカルイノベーション(FMI)国際拠点ならびに大学院農学研究院に設置された研究拠点などで共同研究を進めていきます。

また、新たな産業やイノベーションの創出をめざし、北海道の企業や行政の協力を得ながら、開発する技術及びソリューションの社会実装に向けた実証実験なども行う予定です。


プラネタリーバウンダリー
ストックホルム・レジリエンス・センターの科学者であるヨハン・ロックストローム博士らにより開発・提唱された概念です。

地球システムの安定性と回復力を規定する9つのプロセス(気候変動・新物質の排出・成層圏オゾンの破壊・大気エーロゾルの負荷・海洋酸性化・窒素とリンの循環・淡水の利用・土地利用の変化・生物多様性の喪失)に対し、人類が安全に生存できる領域と回復可能な限界値の存在を定義するとともに、地球環境の不可逆的な変化を回避するため、これらの地球の限界(プラネタリーバウンダリー)を把握することが重要だと考えられています。


【開設の目的】
今回の「ソーシャル・イノベーション部門 for プラネタリーバウンダリー」は、北海道大学における産業創出部門の一つとして開設しました。産業創出部門では、民間企業などが、共通の課題について一定期間継続的に共同研究を実施することで、社会的に付加価値の高い産業を創出し、イノベーションを推進することを目指します。

北海道大学は、総合大学としての幅広い研究に加え、国内の他大学にはない特徴として、約660km2という広大な土地面積を生かし、農業・森林・海洋などの幅広い分野においてフィールド研究を実施してきました。

一方、ソニーグループのR&Dセンターでは、センシング・通信・AIなどの技術を活用し、環境破壊の未然防止や自然災害の予兆検知、農業・畜産業の生産性向上への貢献をめざすプロジェクトを進めてきました。

本部門は、両者の知見を活かした共同研究を通じて、プラネタリーバウンダリーの観点から、農業・森林・海洋分野において世界が直面する社会や地球環境の課題解決に貢献する革新的な技術及びソリューションを創出することを目的としています。


【研究内容】
本部門では、以下の3つの研究テーマに、両者が連携して取り組みます。

① 革新的スマート農業(担当:野口教授)
無人トラクターなどを用いるスマート農業の研究に、センシング・AI技術などを応用することで、高度な農業DXを実現し、地球温暖化や世界人口増加などから生じる食糧問題、農業が抱える就業人口減少及び高齢化などの課題の解決をめざします。

北海道大学とソニーグループ、スマート農業や海洋分野にて共同研究
② リジェネラティブアグリカルチャー(担当:内田准教授)
近代農業には、窒素・炭素循環を大きく改変し、地球環境に影響を及ぼしてしまうという課題があります。この課題に対し、土壌・大気・水域における複雑な栄養素の循環をセンシング技術などにより効率よく捉え、環境負荷が小さく生態系の機能を最大限活用した、持続的な環境再生型(リジェネラティブ)農業の実現に向けた取り組みを、北海道内の牧場と連携して進めていきます。


③ ブルーカーボンセンシング(担当:仲岡教授)
海洋は、人為的起源により排出される二酸化炭素の約4分の1を吸収すると言われています。中でも吸収機能が高いアマモ・海藻藻場(ブルーカーボン生態系)の変化を解明する研究を、センシング・通信技術を活用した海中モニタリングシステムにより促進し、海洋環境の持続的な保全・管理に貢献します。

さらに、林産資源(グリーンカーボン)に関する研究や水産学研究などを中心とした幅広い分野においても、研究テーマの探索を続けていきます。