インプレスグループでIT関連メディア事業を展開する株式会社インプレスのシンクタンク部門であるインプレス総合研究所は、新産業調査レポート『ドローン物流の現状と将来展望2021』を発行した。
ドローン物流のサービス市場は、2025年度に797億円市場へと成長すると予測しています。2022年後半に予定されている改正航空法の施行により、レベル4(有人地帯における目視外飛行)の飛行が可能となり、農業や点検などさまざまな分野でドローンの利用がさらに進むと見込まれています。
ドローン物流とはドローンで物を輸送・配送することを指します。ドローンには、いわゆる飛行するUAV(無人航空機:Unmanned Aerial Vehicle)だけでなく、自律的に陸上を走行するUGV(自動配送ロボット:Unmanned Ground Vehicle)も含みます。
現状ではドローン物流のほとんどの取り組みが未だ実証実験の段階です。しかしながら今後、2022年後半に予定されている改正航空法の施行により、レベル4(有人地帯における目視外飛行)の飛行が可能となることで、ドローン物流が実用化のフェーズへと進んでいくと見られます。
買い物弱者の増加といった社会的課題への対応や物流業界の人手不足の課題を解決するひとつのツールとして、宅配便やデリバリーサービスの配送員の代わりに、配送拠点から利用者のもとに荷物を届ける“ラストワンマイル輸送”の担い手として期待されています。
■「山間・離島などへき地への輸送・配送」、「運搬」は商用化・実用化フェーズへ
ドローン物流は、「山間・離島などへき地への輸送・配送」、「都市部 戸宅配送」、「災害時の物資輸送」、「運搬」、「公道を活用した配送」、「マンション・ビル等の屋内配送」の6つの用途が考えられています。
そのうち、「山間・離島などへき地への輸送・配送」、「運搬」は商用化・実用化に差し掛かっています。
「山間・離島など、へき地への輸送・配送」は、一部の実証実験が配送料金を利用者から徴収する形で行われています。また、「運搬」用途では、運搬するドローンが製品化されており、事業化フェーズの段階に入りつつあります。
技術面での折り合いが付けば、この分野の市場の拡大はいち早く進むと見られます。
その他の用途では実証実験が繰り返し行われています。UAVによる「都市部 戸宅配送」については、ドローンが有人地帯を避けて通れないため、2022年後半のレベル4飛行の解禁を待って、実証実験が始まるという段階です。
都市部の戸宅配送用途ではむしろ「公道を活用した配送」としてUGVの活用が進んでおり、2020年度からは公道上の実証実験が始まっています。
2021年度末までにはUGVが公道走行するための法令が整備される予定です。また、UGVによる「マンション・ビル等の屋内配送」も、これからさらに実証実験が進むと見込まれます。
「災害時の物資輸送」は、2019年10月の台風19号の被害で、道路崩落により孤立した集落に援助物資を届けるために、東京都がドローンを飛行させた事例に始まり、その後、災害時の物資輸送の訓練も行われるなど検証段階です。
また、政府では2025年までに災害時に物資を輸送するための国産ドローンの開発を進めるとするなど、今後、技術とオペレーションの開発が加速することが見込まれます。
■都市部以外でのドローン活用が先行し、都市部は2030年度以降に普及へ
レベル4解禁によって伸びる分野がドローン物流であり、一部の郵便物の配送と医薬品、日用品や雑貨の小口配送にドローンが活用され、市場が形成されると見られます。
特に山間部や離島といったへき地などの買い物弱者の支援、労働力不足や輸送の多頻度小ロット化が課題となっている物流業界における課題解決のツールのひとつとして、ドローンによる荷物の輸送・配送は普及していくと見られます。
ただし、レベル4の飛行が認められるようになっても、当面は都市部以外の場所での利活用が先行すると見られます。
無人地帯としてドローンが飛行できる離島・山間といったへき地においてドローン物流の実績を積み上げていく中で、次第に都市部での活用が本格的に始まると見込まれます。
都市部でのドローンを活用した配送は、機体の運行管理技術の高度化や機体性能の向上等、さまざまな課題を解決しなければならず、その本格的な普及は2030年度以降になると予測しています。
本報告書では今後拡大していくドローン物流にフォーカスし、国内のドローン物流の現状と課題をまとめ、今後を展望しています。
ドローン物流の現状と将来展望2021
https://research.impress.co.jp/report/list/drone/501080
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