最近よく耳する「スマートグリッド」。ITを活用して電力需給情報をリアルタイムにやり取りすることにより、発電や送電などをスマートにコントロールする機構を組み込んだ次世代の電力網である。家庭内にある家電に人工知能機能を持つマイコンを搭載させ、全ての情報をネットワーク化したり、現在の電力量を数値として見える化を行いながら、こうした計測された数値をコンピュータが自動的に認識・制御する技術でもある。
このようなネットワーク化を庭の土壌環境にも融合させようとする技術が「ガーデンボット(GardenBot)」である。ガーデンポットは、主に家庭菜園や簡単な農業にチャレンジする一般の方を対象にした商品であり、土壌の水分や温度、光といったデータを計測して、ネットワークにつながれた一般的なPC内にインストールしたソフトウェアが指揮官となり、水道や電力系統を自動制御してくれる優れもの。
デザイナー兼アーティストのAndrew Frueh 氏が発明者であり、趣味であるガーデニングとオープンソースのマイクロコンピュータを融合させて作製したものである。メイン機器はArduinoと呼ばれるマイコンを採用しており、Arduinoは、アナログやデジタル入出力ができるビジネスカードサイズのコンピュータのことで、様々なセンサーやボタン・スウィッチ、オーディオやビデオ機器といった様々なものをつなぎ合わせることができるものだ。
現在はまだベータ版であるが、あなたの庭の土壌環境をモニタリングし、現状を分かりやすくビジュアル化してくれる。プロではなく家庭用の場合、数値データだけを並べても普及は難しく、見ただけで土壌環境が分かるように絵や図を表示してくれる点もポイントの一つである。
趣味レベルの家庭菜園の場合、経験や長年の勘といった栽培ノウハウを持ち合わせておらず、さらに時間的にも限られていることが多い。水を与えないと植物は枯れ、与えすぎると腐らせることも多い。最近では家庭菜園にチャレンジする人が急増し、関連市場も拡大を続けているものの、フマキラーによると、家庭菜園を始めて1年以内で中断する人は4割に達すると言われており、忙しい生活の中で継続的に続ける難しさもあるようだ。
一方で、こうしたIT技術を植物栽培システムに導入することは、一般的な人々の方が農家よりも普及が早いかもしれない。農林水産省が2006年にまとめた調査結果では、農業経営にIT(情報技術)機器を利用している比率は24%と低いのが現状であるが、携帯やPCが生活の一部となっている人々にとって、こうしたITツールは身近な存在であるだろう。
以前もご紹介したが、土壌環境を計測し、水が足りない場合はツイッターやメール・電話で知らせてくれるという驚きのサービスなど、現在では家庭用の植物育成システムとPCや携帯を融合させたサービスやiPhoneツールがたくさん開発されている。スマートグリッドやネットワーク化を進める一環に、こうしたガーデニング用の土壌計測・制御機器を導入することは、さほど難しくないように思える。
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日本国内の植物工場ビジネスについては、調査レポート:植物工場ビジネスの将来性『植物工場の6割赤字/収支均衡3割の現状を打破するためには』 に掲載しておりますので、参考にして頂ければ幸いです。