月桂冠総合研究所は、酒粕中に腸内細菌の増殖を促進することで知られる有用成分「レジスタントスターチ」(難消化性でんぷん)が、米こうじの10倍量(酒粕100g中に2.81g=乾燥重量)含まれていることを確認した。
「レジスタントスターチ」は、難消化性で食後の急激な血糖値上昇を抑える効果などが知られています。
さらに、腸内環境を整える善玉菌として知られるビフィズス菌の増殖試験を実施したところ、酒粕の存在下では、米こうじに比べて有意にビフィズス菌が増殖することを、有機酸の量を指標にして確認しました。
酒粕や、酒粕を原料とする甘酒を摂取することにより、善玉菌のビフィズス菌の増殖が促進され、ひいては腸内環境の調整に資することを示唆するものです。
日本酒醸造の副産物として得られる「酒粕」には、食物繊維やタンパク質のほか、ペプチドやアミノ酸など、麹菌の酵素による原料成分の分解や、酵母の発酵により生み出された多様な成分が多く含まれています。
これら酒粕中の多様な成分が織り成す健康的な効用が確認されており、月桂冠でもこれまでに、酒粕や酒粕タンパク質、酒粕ペプチドなどの酒粕成分による血中アルコール代謝促進、血圧上昇抑制、コレステロール低減、血中中性脂肪低下、血流改善により体が温まるなど数多くの効用を報告してきました。
今回の研究は、国民的な健康飲料となった「甘酒」の持つ有用な機能性に寄与する酒粕成分の探索を目的に実施したものです。甘酒は使用する原料により、「酒粕」「米こうじ」の2タイプに大別されます。実験は「酒粕」と「米こうじ」との成分比較により行いました。
その結果、酒粕は米こうじに比べ、「レジスタントスターチ」を多く含有するほか、アルコール代謝促進効果が認められているアラニンやアスパラギン酸、血管拡張作用のある一酸化窒素を産生するアルギニンなど、アミノ酸類を多く含んでいることを確認し、これらの成分がアルコール吸収抑制や血流改善などの効果に寄与している可能性を見出しました。
この研究成果は、「酒粕甘酒の機能性成分の探索 ~アミノ酸とレジスタントスターチの機能性~」と題して、今春の「日本農芸化学会2019年度大会」(主催:公益社団法人日本農芸化学会)で発表しました。月桂冠では今後、酒粕中の有用成分が効用を発揮する機作を確認するなどで、酒粕の持つ新たな機能性についての実証を進めていきます。
【月桂冠総合研究所について】
1909(明治42)年、11代目の当主・大倉恒吉が、酒造りに科学技術を導入する必要性から設立した「大倉酒造研究所」が前身。1990(平成2)年、名称を「月桂冠総合研究所」とし、現在では、酒造りの基礎研究、バイオテクノロジーによる新規技術の開発、製品開発まで、幅広い研究に取り組んでいる。
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