景気の影響を受けモヤシの消費拡大。種となる中国産:緑豆の価格高騰で販売しても利益にならないモヤシ・ビジネス

最近は天候不順による野菜価格の高騰も落ち着きつつあるが、以前として景気の低迷が大きく改善されたとは言い難い。こうした中、安価で価格変動の少ない「もやし」の売れ行きが好調のようだ。関東に展開するスーパーのいなげやは、1袋240グラムに2割増量した商品の売り場を拡大し、土曜日は25%の値引きで集客の目玉商品にしている。
 
 
モヤシの小売価格は100グラムあたり15?20円。現在、同35円のレタスや同43円のキュウリなどと比べ割安。料理のかさが増えることもあり、節約したい消費者の強い味方となっている。天候不順で野菜が軒並み値上がりした4月は割安感が特に強まり、総務省によると、全国の2人以上世帯(農林漁家世帯除く)の購入量は前年同月比17%増の713グラムとなった。

こうした消費拡大に対してメーカー側も対応に迫られており、例えばメーカー最大手の成田食品の工場(栃木県真岡市)では、原料豆が約10日間で袋詰めされるまでに成長させ、関東のスーパーや生活協同組合に次々と納入している。
 
景気の影響を受けモヤシの消費拡大。種となる中国産:緑豆の価格高騰で販売しても利益にならないモヤシ・ビジネス

<成田食品HPより引用>

 
同社によると、4月の出荷量は前年同月比3割増、5月は2割増。鈴木与市工場長は「6月に入り引き合いは少し落ち着いたが、12カ所ある育成室を7月中に4カ所増やす」と話している。
しかし、もやし業者は手放しでは喜べない状況である。モヤシの消費拡大に対して、生産能力に限界がある上、現在主流のもやしの種となる「緑豆」は、ほぼ輸入に頼っており、主力の中国産が高騰しているためだ。つまり、売っても、売っても赤字になる可能性がある、ということだ。
 
 
もやしの種となる緑豆は、9割が中国からの輸入で、09年秋に収穫された緑豆の取引価格が08年産より約6?7割高と高騰した。主産地の吉林省や内蒙古自治区などが干ばつに見舞われたことや、中国国内での緑豆を使った加工食品や漢方薬としての需要の高まりが原因とされ、業者は緑豆を確保するのに苦労している。
 
 
中国では、09年の緑豆収穫量が平年の6?7割にとどまり、中国国内の需要も増加。モヤシ原料の争奪戦が起きている状態である。それでも、5月の輸入価格は前年同月比約2倍の1トン2600ドル前後となっており、日本国内の消費拡大に対応すべく、原料となる緑豆価格が高くても、購入せざるを得ないのが実情である。
 
 
スーパー等では特売商品の対象になることが多いモヤシ。今のデフレ状態では、コスト上昇分の価格転嫁は困難である。全日本豆萌工業組合連合会によると、中小を軸に全国約200社あるメーカーに淘汰の波が押し寄せているようで、今後は収益が出ないモヤシ・ビジネスの現状を打破するための取組み・工夫が必要となるだろう。
 
 
※ 5月9日asahi.com(朝日新聞社)、6月9日日本経済新聞、成田食品WEBサイトを参考に記事を作成