最低気温が氷点下になる2月中旬、小売店舗や直売所を視察するために韓国ソウルを訪問したことから、その調査の一部として、ある地元の八百屋を訪問した内容を紹介する。
白い息を吐きながら一生懸命に呼び込みをしている地元ソウルの八百屋に話をうかがった所、韓国も日本と同様に、農家の高齢化と若者の農業離れが進行し、農業人口が減少している、とのこと。
販売商品の多くが、国産にこだわっており、寒さの厳しい韓国では屋外に出されたプラスチック・ダンボール内に陳列された野菜も、ある程度の新鮮さを維持できる。韓国のキムチ商品は豊富にあり、全面にアピールする中で、店奥のブースには醤油や味噌、辛子など日本から輸入された商品も陳列されていた。
訪問した八百屋では、ブロッコリーが約100円(1,000韓国ウォン)、カボチャは約200円、ピーナッツは一袋が約200円、キノコは1パック約50円と、国産の農産物だが日本と比べて価格は安い。
ただし、売れ残った野菜は次の日も販売され、低温下で長時間放置されているためなのか、決して野菜の品質が良い、というわけではなかった。
例えば韓国キムチは近年、中国産が大量に流通しているものの、国産キムチにこだわりを持つ品質重視のレストランも存在する。こうしたレストランが存在するからこそ、ソウルの都市部でも地域密着型の八百屋が求められているのだろう。
国産にこだわるレストランのオーナーによると、様々な野菜をキムチにした商品の9割は国産の野菜を使用しており、輸入された冷凍野菜は1割程度。はやり、韓国で生産された野菜の方が明らかに美味しい、という。
温室ハウスなど施設園芸面積では日本と同じくらい大規模に施設栽培が行われている韓国だが、その面積も徐々に減少しつつある。既存の農業ビジネスは儲からないイメージが強く、若い農業経営者の育成と品質の良い地産地消の野菜を評価できる消費者を教育することが重要であり、直近の課題でもある。
例えばソウル市内では、屋上スペースを利用した地産地消クッキングや植物工場をはじめとする都市型農業の規制緩和を進めている。都市部住民による就農をプロモーションしており、今までとは異なるアプローチにて韓国農業を発展させていく必要があるだろう。
● 韓国ソウル市による都市型農業計画、2018年までに約1800カ所の農場整備へ
● 韓国ソウル市、規制緩和により垂直農場・植物工場プロジェクトを計画
● 韓国・新たなライフスタイルを求めて都市部住民による就農が2010年の10倍以上に急増
● 韓国ソウル市の「地産地消型クッキング講座」。屋上ファームと料理教室の融合サービス
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