理化学研究所(理研)産業連携本部イノベーション推進センター高効率紫外線LED研究チームの椿健治チームリーダーなどは、殺菌用の深紫外LED(発光ダイオード)を従来の5倍程度高効率化することに成功した。
波長200~350ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)の光を発光する深紫外LEDは、殺菌・浄水、空気清浄をはじめ、医療、樹脂硬化形成・接着、印刷など非常に広い応用分野での利用が期待されています。
しかし、これまでの深紫外LEDは、LED内部で発光した光を外部に取り出す効率(光取り出し効率)が低いため高効率動作が難しく、普及が進んでいません。
光取り出し効率は、(1)LEDのコンタクト層によって紫外光の多くが吸収される、(2)電極で紫外光が吸収される、(3)素子内の内部反射で光が外に出にくいという三つの影響で大幅に低減されています。
今回、共同研究チームは、加工サファイア基板(PSS)上に高品質な窒化アルミニウム(AlN)テンプレート層を結晶成長させ、その上にn型窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層、発光層、電子ブロック層、透明なp型AlGaNコンタクト層を製膜し、高反射特性を持つロジウム(Rh)電極をp型電極として形成しLED構造を作製しました。
その結果、光取り出し効率が大幅に向上され、外部量子効率は殺菌用途に最適な275nm付近の波長において、これまでの4.3%から20.3%という世界最高の効率動作に達しました。
この値は、現在殺菌灯として用いられている低圧水銀ランプの効率(約20%)に迫るものです。
今後、本手法による高効率な深紫外LEDが実現すれば、殺菌・浄水、空気清浄のみならず、皮膚治療などへの医療用途や、農作物の病害防止などの農業、紫外線硬化を用いた樹脂形成、紫外接着、3Dプリンター、印刷・塗装、コーティング、各種計測など幅広い応用分野での普及が期待できます。
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