ロームグループ・ラピスセミコンダクタ、世界初・土壌環境のリアルタイムモニタリングが可能な土壌センサを開発

 ロームグループのラピスセミコンダクタは、IT農業や社会インフラ監視などのIoT(Internet of Things)ソリューション向けに、酸性度(pH値)、水分量、温度といった土壌環境をリアルタイムに測定できるセンサを世界で初めて開発した。
本センサは土の中に直接埋め込みが可能で、無線通信と組み合わせることにより、土壌環境をリアルタイムでモニタリングすることが可能なため、農産物の生産性向上のほか、防災対策などの社会インフラ監視に大きく貢献する、という。
ロームグループ・ラピスセミコンダクタ、世界初・土壌環境のリアルタイムモニタリングが可能な土壌センサを開発

 近年IoTへの注目とともに、様々な環境情報をセンシングし、データを解析することにより、安心安全や生産性向上に役立てる動きが活発化してきています。特に大気に比べて環境情報のばらつきが大きいといわれる土壌環境を見える化し、農産物の生産性向上や、土砂災害防止といった防災対策への市場ニーズが高まっています。

こうした中、一部で農産物の圃場モニタリングが始まっていますが、従来は土壌を実際に採取した後、評価施設に持ち帰り、分析する必要がありました。そのため、数メートルで大きく変化する土壌環境のリアルタイム計測や広範囲の土壌情報を同時に取得することは困難でした。

 今回、酸性度の測定部にISFET(※1)を採用するとともに水分量や温度計測のセンサをワンチップ化し、小型化を実現。構造面の最適化により土壌モニタリングの精度面での課題であった接触性、耐久性も向上させることに成功しました。計測したいエリアの土壌に簡単に埋め込むことができ、無線通信を組み合わせることで、広範囲かつリアルタイムでの土壌環境モニタリングを実現します。

本センサは、静岡大学工学部 二川准教授との共同開発によるもので、半導体の適用領域とは異なる多くの大学や研究機関と協力し、技術改良を行ってきました。今後は社会インフラ分野、農業分野、ヘルスケア分野などへの応用に向けて、ソリューションパートナーとともに実証実験を開始します。
ロームグループ・ラピスセミコンダクタ、世界初・土壌環境のリアルタイムモニタリングが可能な土壌センサを開発

<技術の詳細/実証実験>
1.世界初、半導体を用いた土壌モニタリングを実現
一般的に酸性度(pH)計測はガラス電極方式が主流で、計測のたびに土壌を採取する必要がありました。本センサはpH計測にISFET方式を採用し、水分量、温度の各センサを半導体基板上に1チップに混載し小型集積化を図りました。

一方、従来の酸性度(pH)や水分量を計測するセンサは、半導体回路内のセンサ部表面が疎水性膜で構成されており、測定対象となるセンサと土壌中の水分との間にエアポケットが生じ、正確な計測結果を得ることができない、という課題がありました。この課題を解決するため、本センサは測定部表面を親水成膜で構成し、電極部の構造を最適化することにより、エアポケットの生成を抑制に成功。困難であった信頼性の高い土壌環境の測定を実現したセンサを開発しました。
ロームグループ・ラピスセミコンダクタ、世界初・土壌環境のリアルタイムモニタリングが可能な土壌センサを開発

2.無線通信、マイコンとの組み合わせによるIoT化が容易になり、リアルタイムモニタリングが可能に
今回開発した土壌環境センサは、無線通信LSIやローパワーマイコンと組み合わせ、地中環境情報のリアルタイムモニタリングと、データを活かした新しいアプリケーションの創出に貢献できます。リアルタイムモニタリングの事例として、ラピスセミコンダクタの920MHz帯無線通信付き、超省エネマイコンボード「Lazurite Sub-GHz」を用いた土壌環境センシングがあり、単3電池2本で約1年のリアルタイムモニタリングが可能です。

※1 ISFET:Ion Sensitive Field Effect Transistor(イオン感応性電界効果トランジスタ)。イオン感応膜を有するFETで、イオン活量によって発生する、測定サンプルとイオン感応膜の表面電位を検出する。シリコン半導体製造技術により作製できる。