農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)の生物系特定産業技術研究支援センターとシブヤ精機は、固定設置型(定置型)のイチゴ収穫ロボットシステムを開発した。
移動型から定置型にすることで昼間も収穫でき、稼働時間が12時間から22時間程度に拡大した。今後、実証試験を経て来年度の販売を目指す(写真:農研機構WEBサイトより)。
定置型システムは、収穫ロボット本体と16台のイチゴの栽培ベッドからなる。栽培ベッドが収穫ロボットの前に移動してくるとCCDカメラで赤い果実があるか調べ、検出するとベッドを一時停止。
色づき具合などを判別して条件を満たせば、刃付きのロボットの指で収穫する。1時間で16台の栽培ベッドを処理し、成功率は最大70%だった。
直射日光がイチゴに当たると色を識別するのが困難になるため、移動型ロボットでは夜間しか収穫できなかった。定置型は稼働時間を伸ばせるほか、栽培面積を移動型の2倍に増やせる。
収穫作業の自動化を目指して、これまで移動型のイチゴ収穫ロボットをNAROでは開発し、対象果実の内の5〜6割程度を夜間に収穫できることを実証したものの、ロボットのコストダウンが大きな課題として残っていた。
一方、同時期に開発されたイチゴの循環式移動栽培システムは、慣行栽培の2倍程度の密植が可能で、定植から栽培管理、収穫を定位置で行える特長があった。
そこで、2011年度から既存イチゴ収穫ロボットの技術と循環式移動栽培装置を連動させ、機構の単純化によるコストダウンを図ると共に、収穫を定位置で行えるシステムの開発に着手した。
また、昼間では周囲が明るすぎて赤色果実の判別精度が低下する問題があったが、2012年度には果実周辺の遮光と昼間動作プログラムを組み込んだ定置型イチゴ収穫ロボットの開発に成功し、これによって稼働時間が拡大したのである。
今回の定置型イチゴ収穫ロボットは、循環式移動栽培装置の横移送ユニット中央に配置されている。今回の開発に用いられた循環式移動栽培装置は長さ3.6mの栽培ベッドを16台搭載することが可能である。
そしてロボットは、マニピュレータ、マシンビジョン、「エンドエフェクタ」(マニピュレータ先端に取り付ける手指に相当する部分)およびトレイ収容部という構成である。
日本のイチゴの産出額はおよそ1500億円で、単価も高値安定しており産地の基幹作物になっている。
温室ハウスによる促成栽培では、とちおとめ、あまおう、紅ほっぺ、女蜂、章姫など、1年で限られた時期(12月〜5月頃)にだけ果実のなる品種である「一季成り品種」を9月に定植して、収穫が12月から翌年の5月頃まで続く。この栽培期間中に必要な労働力は約2000時間/10aで、その内の収穫作業が23%を占めるという。
Editor's Picks
-
田んぼに浮かぶホテルがコンセプト、スイデンテラスがリニューアルオープン
-
緑演舎による造園家がプロデュースする個人住宅向け「GARDENNERS HOUSE」事業をスタート
-
ミラノ都市部で自然に囲まれたオフィス空間を実現。ハイテク企業や研究者のハブ施設へリニューアル
-
シンガポールの高層住宅タワーをリニューアル。屋上には住民参加型の菜園も整備
-
メルボルンに駐車場スペースを活用した屋上農園「スカイファーム」が来年に完成
-
台湾の青果市場、屋上に農場を導入した最新施設として2020年に完成予定
-
ロンドン、屋上に植物工場ファームを併設した地元フードコート施設を開設
-
UAEの陸上養殖ベンチャー『Fish Farm社』サーモンなどの魚を本格販売へ
-
カナダの大学が連携。クリーン・エネルギー技術を活用した『高層タワー型の植物工場』を計画
-
海面上昇の対策、海洋に浮かぶ街「フローティング・シティ」食料やエネルギーの自給自足を実現