植物工場開発・電子機器開発の株式会社キーストーンテクノロジーが、独自開発・製品化したシステム「アグリ王」をH.S.V.株式会社(本社:富山県射水市)に納入し、今後は研究ではなく生産を目的にした全面LED光源の完全人工光型・植物工場が国内で稼働することになる。
省エネ型LED栽培ユニット「アグリ王」を大規模植物工場に導入
日本初・RGB独立制御型LED採用の省エネ型植物工場が富山で本格稼動
植物工場開発・電子機器開発の株式会社キーストーンテクノロジー(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長・CEO:岡崎 聖一)は、このたび完全人工光型植物工場事業を開始したH.S.V.株式会社(本社:富山県射水市)に、省エネ型植物工場用LED栽培ユニット「アグリ王」32台を納入しました。
「アグリ王」は、当社が2010年に独自開発・製品化した多段式植物栽培ユニットです。光源に利用している高輝度LEDはRGB独立制御型で、栽培ユニットごとに光環境を制御することにより、多品種少量生産が可能です。同工場は、この最新LEDシステムを採用した「アグリ王」を栽培装置として導入し、クリーンルーム仕様の設備で環境を制御することにより、無農薬で栄養価の高い安全な「高機能野菜」の生産を可能にしています。
また、従来の蛍光灯型植物工場に比べて大幅な省エネを実現し、空調も含めた電力消費量は50%以下(※)となる見込みです。さらに、植物栽培に最適化した空調制御システムにより、工場内の温度・湿度・CO2濃度等を管理し、栽培プラント水質管理、消費電力等も含めて一元的にモニタリングできる「見える化」システムも導入しています。
経済産業省などが2009年に公表した調査によると、全国の完全人工光型植物工場は34施設ありますが、育成の全工程にRGB独立制御型LEDのみを利用した完全人工光型の植物工場は例がなく、本格的な生産施設としては日本初となります。同工場では9月からの本格稼働により日産800〜1,000株の葉物野菜を生産・出荷する予定です。
(※) 当初計画の蛍光灯型植物工場との比較による
■植物工場に特化した「4元系赤色660nmLED」を独自開発・製品化に成功
これまでの完全人工光型植物工場は、蛍光灯による照明が主流でした。しかし、蛍光灯は元々人に対しての照明システムであり、植物の成長に重要な赤色波長(660nm付近)が比較的少ないという欠点がありました。また、40Wの白色蛍光ランプの場合、電気エネルギーが可視光に変換される割合は約25%です。そのため、蛍光灯の設置本数を増加すると発熱量が多大になり、その結果、空調費用が増加。生産コストの低減を困難にする一因にもなっていました。
当社では独自の研究成果をベースに、植物工場に特化した「4元系赤色660nmLED」を自社開発し、2010年、製品化に成功しました。栽培ユニット「アグリ王」には、この「4元系赤色660nmLED」を組込み、赤色(R)・緑色(G)・青色(B)をそれぞれ独立して制御できるようシステム化しました。さらに光源水冷装置との組み合わせでLED素子としては最大級3W相当の大出力を実現しています。
また、付加価値の高い高機能野菜を短期間で栽培するためには光質制御が重要です。そのため、当社では社内に植物生理学の研究チームを設け、LEDの光質制御が植物栽培に及ぼす影響について研究成果を蓄積し、顧客へのノウハウの提供も行っております。
■販路開拓・マーケティング支援で包括的な事業サポートを展開
植物工場ビジネスは異業種からの新規参入が多いため、マーケティングや販路開拓のノウハウが不十分のまま事業が開始されるケースが多くみられます。そこで、当社ではオリジナル野菜ブランド「横浜・馬車道ハイカラ野菜」を立ち上げて生産から販売までを実施。メーカーとしての設備開発にとどまらない6次産業の実践により、栽培指導・マーケティング・販路開拓など、事業を成功に導くための包括的な支援を顧客に展開しております。
また、2010年10月には当社および奈良建設株式会社(本社:神奈川県横浜市)との合弁で、植物工場設備を拡販する株式会社アグリ王を設立しました。
さらに、2011年9月13日付で、佐藤工業株式会社(本社:東京都中央区)および株式会社アグリ王との3社において、「アグリ王」システムを用いた植物工場事業に関する営業協力契約を取り交わしました。今後もプラントメーカーとしての枠を超えて、食の安全、省エネルギー化、遊休工場の再利用など、社会課題解決につながる有益な事業展開を進めてまいります。