コンテナ製造を行うワイ・エス・シーは、自社の中国工場で安価に製造することで、従来型の商品より販売価格を4分の1程度にまで抑えた。三菱化学・フェアリーエンジェル等がカタールへ販売した40フィートタイプが約5000万円であったが(詳細記事)、同社の商品は40フィートコンテナを6台連結したタイプで約7000万〜8000万円、20フィートタイプ単体であれば、約700万〜800万円で販売する予定である。
ただし単純比較はできない。三菱化学の場合は太陽電池やリチウムイオン電池や水のろ過処理装置など、中東の気候・環境でも対応できるようになっているからである。
保冷コンテナ内に水耕栽培システムやエアコンを設置した植物工場であり、40フィートコンテナは壁を取り払うことで最大6台を連結でき、計:約190平方メートルの植物工場として使用可能である。ホウレンソウやサンチュなどの野菜を栽培でき、レタスは最大で年間約21万6000株収穫できるという。
一般的な完全閉鎖・人工光型の植物工場でも簡易型(クリーンルーム化を実施せず、汎用性商品・技術を組み合わせた商品)にすることで、従来型の栽培システムより、半分の初期導入コストで栽培できるものもある。大きな初期コストが障害となり参入を控えていた企業にとっては、様々な商品の選択肢が増え、非常に有難いことであるだろう。ただし、重要なことは価格だけではない。例えば栽培技術・ノウハウ面での優位性も考える必要がる。
例えば、いくら実証実験による数値データをもとに予測された収量であっても、実際に植物工場を稼働させた場合、計画通りの収量や秀品率(商品として販売できる割合)が達成できないことがある。運営当初は、どの企業も直面する問題である。その原因は様々であり、外的環境や内部の空調・養液・照明といった可能性が考えられ、いかに早く計画通りの生産量に栽培システムを修正していくか。今までの栽培技術・ノウハウが蓄積された企業であれば、柔軟に迅速に対応できるのである。
また、コンテナ型植物工場では、そのビジネスモデルも非常に重要になってくる。早い場合は1日で設置可能で、撤去や移動も楽なコンテナ式。短期的な空きスペースや駐車場にも設置可能である。こうしたメリットを生かして、一般的な固定式の植物工場では不可能であった、様々なビジネスモデルに利用することができ、アイデア次第では別の収益モデルを構築することもできるかもしれない。
実は過去にも、コンテナ式の栽培システムをトラックの荷台に設置し、運搬と栽培を同時に行ってしまおう、という実験的な取組みを行っていた企業もあったが、小型サイズの植物工場であれば飲食店などへの店舗併設モデルがあるように、コンテナ式もこれだけ販売価格が下がってくれば、様々なビジネスモデルでチャレンジする企業が増えてくるだろう。
日本国内の植物工場ビジネスについては、調査レポート:植物工場ビジネスの将来性『植物工場の6割赤字/収支均衡3割の現状を打破するためには』 に掲載しておりますので、参考にして頂ければ幸いです。